貴方の隣に



「試合凄かったわね!」


ガブリエラが興奮冷めやらぬ状態で皆に尋ねる。


「まだイマイチルールは掴めてないけど、楽しいのはわかるわ!」


テイラーは少しだけ首をすくめつつ笑った。


「へー、テイラーでもわからない、覚えづらいことってあるのね!」


マーサがケラケラ笑ってテイラーの肩を叩く。


「私だって何でも知ってる訳じゃないし…覚えが早い訳じゃないわよ」


テイラーはマーサの方を向いて、少しふて腐れたような表情をした。


「お、いたいた…テイラー!」


「チャド!」


やっとこ現れたチャドがテイラーに声をかけて軽く手を上げた。

テイラーは嬉しそうに駆け寄った。


トロイとガブリエラも、ジークとシャーペイも嬉しそうに話し始めて。


ライアンとマーサを含めたそれぞれが手を繋いだり組んだりして帰り始めた。


気づけば、私はぽつんと立ち尽くして居た。


1人が怖いやら、ジェイソンが来なかったらどうしようとか、1人でいる所為か不安感が募っていって、もう帰ろうか、どうしようか悩んで居た時だった。


「や、ケルシー」


穏やかな声と同時にひょっこりと顔を出したのは、ジェイソンだった。


「ジェイソン!」


私が駆け寄れば、ジェイソンは楽しげに笑ってくれて。


ジェイソンの笑顔に、ドキドキして。


「皆から色々話しかけられたりとかしてたから遅くなっちゃった、ごめんね」


申し訳無さそうに謝るジェイソンに、私は慌てて大丈夫、なんて言って。


「じゃあ、帰ろうか」


手を繋ぐことも、組むこともせずに、私達は帰路を歩き始めた。


少し歩いたところで、不意にジェイソンから話しかけられた。


「バスケ、見ててどうだった?」


ジェイソンが私を見ながら話してくれば、さっきまでのバスケの試合が鮮明に思い出された。


パス、ラン、シュート、ディフェンスの激しさ、皆の大きな声、お互いの信念のぶつかり合い。


そして、ジェイソンが決めた劇的な逆転勝利。


皆が叫んだ、ジェイソン・クロスのコール。


全てが鮮明に浮かび上がり、興奮を思い出してしまう。


「凄かった…とにかく、凄かったわ」


私がそう告げれば、ジェイソンはまた笑ってくれた。


「良かった、楽しんで貰えて…」


ジェイソンはそう言って首筋を掻いていた。


「…後、あとね…あのジェイソンのシュート…凄くカッコよかったわ!」


顔が赤くなるのを感じながら言えば、ジェイソンはびっくりするやら照れ臭いやら、はにかんでいた。


「あれは…その、あれだ、偶然…そう、まぐれだよ!」


慌てながらはぐらかすジェイソンが、何だか愛おしく感じた。


「まぐれでも偶然でも…凄く、カッコよかったわ」


私が再度告げれば、ジェイソンの顔は真っ赤になっていて。

多分、私も同じかそれ以上に真っ赤なんだけど…ね。


「…でも、良かったよ」


「ケルシーに…カッコイイとこ、見せられて」


ジェイソンがそう話した瞬間だった。


不意に、肩に手を回され、引き寄せられた。

びっくりするやら緊張するやら恥ずかしいやら照れるやら、心臓が爆発しそうな程、鼓動した。


「…好きだよ、ケルシー」


聞こえるか、聞こえないか、ギリギリの声で、ジェイソンが囁いた。


私は耳や首まで真っ赤にしながら、なんとか言葉を紡いだ。


「…私も、ジェイソンが…す、好きよ!」


2人で顔を見合わせて笑って、手を繋いで帰った。


次の日、ガブリエラ、テイラー、マーサに尋問みたいにそれでもかってぐらい聞かれたのは言うまでもない。


ちなみに、ジェイソンもワイルドキャッツで同じ目に遭っていたらしい。

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恋の花 こびと @hsmlove

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