第10話 きみの力に

今日の授業も終わりいつもの放課後だ。

いつもなら牧野達と遊ぶのだが、牧野は塾で忙しいし

退屈だから1人でポツンと教室にいる西沢に話しかけることにした。


「よ!元気してるか」

「うん…一応」

「やっぱりクラスの中だと話しづらいか?」

「そうだね。クラスにいる時はやっぱりクラスの女の子と話したいかな…。

でもなかなか話せなくて」

「そうだよな。人に話しかけるって勇気いるよな…。

西沢の家のインターホンを押すのもすごい怖かったからな」

「私の家は怖くはないよ?」

「いや、そういう意味じゃねぇよ…」

「そうなんだ…」

「ともかくだこのままではクラスにいる間暇になるだろ。

ならクラスの子と話す練習をしないか?」

「私、練習相手になれるかな?」

「いや、俺がなるんだよ!」


西沢と話してる時はどこか安心感があった。

その天然さには嘘偽りがなくて、言うなれば自然体だった。

だから俺も自然体でいられたんだ。


「よし!じゃあ、まずは西沢が俺に話しかけてみろ」

「こんにちはー」

「こ、こんにちは?」

「いい天気ですねー」

「あ、あのなんの話してるの?」

「これじゃダメかな?」

「ふしぎちゃんと言われてもおかしくないレベルだった…」

「そうなのー?」


俺はなぜ西沢がいつも一人でいるかが分かった気がした。

西沢は多分不器用なんだと思う。だから最初は人に誤解されやすいから

人の輪に入りづらいんだと思う。


「そうだな…なら俺と毎日喋って話す練習をしないか?」

「新城くん、練習するの?」

「いや、お前がだよ。とりあえず登校の時と下校の時に

俺らで喋ってるうちにさ少しずつお前も他の子と話せるように

なるんじゃないか?」

「うん。私がんばる!」


こうして俺たちは登下校で一緒に学校へ行くことを約束した。

きっかけは小さな勇気だった。あの日俺が西沢の家にプリントを

持って行こうと思わなければ俺の日常はつまらないままだった。

だけどその小さな勇気が今の現実を生み出したんだ。


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