第7話 誰かのために

この日の朝の目覚めは悪くはなかった。

珍しく気分がいいから早めに支度して家を出ようと思った。


「そういえば、西沢のやつもう体調は大丈夫なのかな。

ちょっと様子を見に行ってみるか」


俺はこの日、初めて学校から逆の方向へ進み西沢の家へと向かった。

俺が西沢の家の近く辺りに来た時、西沢は家から出てきた。


「あれ?新城くんどうしてここにきたの?」

「あ、、、そりゃあれだよ。風邪の方治ったかな?って思ってさ…」

「それはおかげさまで」

「そ、そうか」


この何ともいえない空気がちょっと重く感じた。

西沢の家に来たはいいけどそこからのことは全く考えてなかった。


「せっかくだしさ、ちょっと学校まで行かないか?道一緒だしさ」

「そ、それは新手のナンパですか?」

「はぁ?ナンパ!?お前俺と同じ小学生だよな…」

「そ、そうだけど」


何をどう考えたらナンパになると言うんだ。

この時、俺は西沢は確かに普段大人しいが、性格が本当に

大人しいかどうかは疑問だった。だってナンパだからなぁ…。


俺はこの時初めて西沢の家から学校までの道を一緒に歩いた。

俺たちは最初はとてもぎこちなかったし、会話も途切れ途切れで

まともな会話にすらなっていなかった。

だけど2人で歩く学校までの道は悪くはなかった。


おいおい、新城のやつ西沢と一緒に登校してんぞ。

なんだよお前。やっぱそういうことかよ。下心丸見えじゃん。


そして俺たちの前に現れたのは昨日俺をからかった連中だった。

そいつらが現れて西沢は俺の背後で怯えていた。

その時思ったんだ。俺は別に何もおかしいことをしてなかったんだって。


「とっとと消えろ!雑魚どもが!二度と俺の前に来るんじゃねぇよ!」


な、なんだよこいつ…

こんなやつほっといてさっさと行こうぜ…バカが移るだけだ。


そう言ってそいつらは去っていった。


「はぁ、全く面倒な奴らだな。おい、大丈夫か」

「うん…あの私も消えた方がいいのかな?」

「はぁ?」


またこいつは何を言ってるんだ…。

もしかして面白い方の「バカ」の分類の人間なのかと思った。


「ところで西沢、お前目玉焼きには何をかける?」

「え、納豆だよ。それがどうかしたの?」


やっぱりそうだった…。普通今の状況でこんな話題を聞くか?って

場面だが西沢はそれにすら気づいてない…。


「とりあえずさ、行こっか」

「うん」


俺たちはこうやって朝の登校を一緒に終えた。

今日は昨日と同じような出来事が起きた。

だが昨日と今ではその出来事の意味は少し変わったんだ。


俺は間違っていなかったんだ。

こういう小さな勇気が新しい未来を生み出すための一歩なんだって

ようやく分かったんだ。




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