第4話 - 顧客折衝
目下大きな問題がひとつ、いやひとつどころではないのだが現在話題に取り上げようとしているものがひとつある。
中村さんの日本語がわからない。
俺はどうも、中村さんの言葉を借りれば「読解力が足りない」らしい。「チャットにこうって書いたじゃないですか!」という種類の叱責をいただくことが多い。多いのだが、でもちょっと待って中村さん、どう見てもそうは書いてない。
この中村さん、読解力やら文章力というものが高すぎて一周してしまったのか、メール文章での句読点の連続(、、、)やら「すみません」の口語体「すいません」なんて序の口、そもそも接続詞の使い方がかなり怪しい。何故これでお客様と意思疎通なんてできるのか、果たしてできているのか疑問だったのだが、お客様からのメールを読んで考えを改めた。
お客様のメールはもっとひどいのだ。
お客様から来たメール文面はてにをはのレベルで完全に狂っていて、正直、読めない。日本語なのに読めない。そのてにをはの狂った文章にルー語よろしくシステム用語が盛り込まれるのだから地獄絵図もいいところで、逆に中村さん、これを読解力の話とするならあなたの読解力は異常だ。
中村さんの指示があんまりにも分かりにくいので丁重に慎重に「自分もお客様とのメール連絡の送信先に含めてくれ」と請願したのを後悔した。これはただ無意味に俺の責任が増えただけだ。
中村フィルターで余計わかりにくい伝わり方をしているのかと思ったらそうではなかった。中村さんですらまだマシなレベルなのだ。これはちょっとした絶望である。これは敗北を意味するのか、是である。日本の母国語教育の明らかな敗北である。
……幼女だと思おう。あるいは日本に来て日の浅い金髪美女だと思おう。オーケイ、俺はまだ戦える。
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