第27話エルドワ、一回十万でどうかな?
今日は土曜日だけど前田達と遊ぶのは夜の予定だ。私と違って、毎日ゲームばかりしている訳にはいかないのだろう。この時間はエルドワも起きていないだろうから一人だな。
一人狩りをして判明した事がある。どうやら十文字槍をポシェットに入れておくと兎が寄ってこないし、持っていてもLV差があるから攻撃されなかった。
アルミラージは攻撃してきたので間違いないだろう。これで兎の餌を外しつつ、アルミラージだけを狩ることが可能になった。
転職用のアルミラージの角は今後必要になるかもしれないので、レベルが上がる前に出来るだけ貯めておきたい。昼間は一人狩り、夜は皆で狩りが基本生活になるな。
アルミラージは、一時間で大体二十五匹は狩れるんだけど、商会に入る前はポシェット枠の都合で、持ちきれない肉や皮を捨てていました。
ところが商会に入ってからというもの、アイテム保管棚のおかげで、ポシェット枠を圧迫させていたアルミラージの角を保管出来るので、肉や皮を捨てることも無くなり、効率よくお金が稼げるようになったんです。
最近なんだか、ギルドのお姉さんからの視線も熱くなったかも?? そんな商会への入会方法は凄っく簡単です。グリフォンが沢山いるところを単独で突破するだけ!
一人で暇だから広告ごっこしてみたがイマイチな出来だった。もう少しモテ要素とウハウハ要素を入れるべきかな。あとオチは金の方がいいかも、分割で安くみせて実は大金とか。
ポシェットから溢れなくなったのは良いんだけど、今度はエールラーケとの往復が勿体無くなってきた。ポシェット枠が十倍くらいあったら良かったのにな。人間の欲は際限がないね。
日本時間十四時、エルドワに会うためにクローネシュタットに着いた。最後のクローネシュタットに向かう時には狩りをしないようにしていたんだけど、ついついアルミラージがいると狩りたくなってしまって、ポシェットがパンパンです。
「えーす。元気か? 私? 元気だよ。買取よろしく」
街に入ったら荷物整理をする前にエルドワに会った。困ったな、ギルドまで来てもらって、ギルド前で荷物の受け渡しをするかな?
「私もポシェットが一杯だよ、一枠ずつなら交換出来るだろうけど、効率が悪いね」
確かに。枠が空いていれば一気に受け渡しが出来るんだけど、エルドワはポシェット枠が一個なのか。二個装備出来ないのかな?
「ポシェットは十万もするんだぞ。勿体無くて買えないよ。必要なら皆で買い出しとかするから」
そうか、そんなにポシェット枠が必要じゃないし、そのマールを別のことに使いたいだろうし、ん? 一人だと限られているけど、二人なら倍買える。
「エルドワ、もし街の外に出れるなら私の仕事を手伝ってみないか?」
別に街の外なら普段から出ているし、別に構わないと返事を貰った。ギルド前まで一緒にいき、エルドワにポシェットをプレゼントした。
「え!? こんな高いものを貰えないよ」
と両手でポシェットを押し返してくる。これを受け取ってもらわないと荷物枠が増えなくて困るんだけどな。
「これから一緒に商売をして行くのだから、それがないと稼ぎが減るんだ。だから気にせず受け取ってくれ。先行投資と思ってくれていい」
「ええ!? 一緒に商売って、それって、でも、そんな、いきなり、気持ちの整理が……」
まだ遠慮しているエルドワに無理やりポシェット渡す、いや腰に装備してしまう。まだ戸惑って、目がブロック崩しのボールのように跳ね回っているエルドワに、
「これでそれはお前のものだ。気にせず使ってくれ」
ここまでしてあげれば、受け取るざるを得ないだろう。
「これで俺はお前のものだ。って、え? え?」
戸惑っているエルドワが小声で何かを言っているが、よく聞き取れなかった。戸惑っているエルドワと取引をして薬草類を貰った。一時的に肉と皮を預かってもらっている。
エルドワは一旦スラムに戻って、出来るだけポシェット枠を空けて来てもらう。私はギルドで精算後、商会で荷物を整理する。
ゲーム時間九時、一緒にクローネシュタットの外に出る。エルドワの装備は初見殺しだ。試しに戦って貰ったが、犬や兎がワンパンで倒されていた。しかも今まで倒された事もないんだって、つえーなエルドワ。
ただ、勝利のポーズで腕を掲げて喜ぶのは良いんだけど、刺さっている兎は外してからの方が良いと思うよ。可也酷い状態になってるから。
少し離れた場所に来たので、エルドワに特別なスキルを持っている事、他言無用な事を話す。
「ちょっと信じられないけど、まあ分かったよ。友達だし秘密は守るよ。しかし、この年でオンブって言われてもな。バイト代に含まれるのか? 仕方ねーな」
渋々なエルドワをおんぶする。
「脱兎」――――「脱兎」――――……
「う゛ぎゃーああー」
すっごく、すっごく速いって教えたんだけどな。あと二回位すっごくを付けたほうが良かったのかも、とりあえず脱兎で移動する。慣れたのか、エルドワが静かになった。
アルミラージがそろそろ出る場所になったので、街道に近づき、安全地帯でエルドワを降ろす。あ、失神してた。
アルミラージを二十五匹狩ってから、エールラーケに移動して、肉と皮を売り、またアルミラージがいる場所に戻って、今度は枠が空いているので五十匹分狩って、エールラーケに向かう。
移動が減った分効率が良くなった気がする。今日のところはこんなもんで良いだろう、そろそろ夕飯だしな。クローネシュタットまで戻り、バイト代として十万マールと、アルミラージの角一本、と兎の涙一個を渡した。
「これ高いんじゃないのか? 貰いすぎだよ」
やっぱり断ろうとするエルドワに無理やり渡す。
「エルドワが居たから効率良く狩れたし、今日はサービスだよ。今後は一回十万でどうかな、それと可能なら明日は夜の二十三時頃から狩りにいけないかな?」
朝九時半から狩りが出来れば、相当効率が良いはずだ。
「え!? そんな夜中から狩りするのか? 本当に狩りなのか?」
何を疑っているのか分かりませんが、子供相手に変なことをするはずもありません。OKを貰えたので、日本時間の朝九時半に南門で待ち合わせする事にした。
日本時間十八時半、ゲーム時間十七時、土曜日なので多人数での狩りをすることに。でもその前に前回の反省会を行い、議長はハンガクに任せた。
「私はこのゲームや他のゲームの知識、常識という物が不足している。その点ハンガクは物知りだし、人を纏めるのも得意だから、頼りにしているよハンガク」
と言ったら、
「しっ仕方ないですねー」
と張り切って仕切っている。ハンガクを頼りにしているのは本当だ。ただ、他の人に任せられる仕事は他の人割り振り、自分の時間を作るのも大事だな。モグモグ。
任意参加の反省会だったが百人位いて収集がつかなかった。出てきた意見は、
・楽しい
・もっと開催して
・人が多い
・もっとレベルの高い敵と戦いたい
・敵と戦えない
・混戦しすぎて、敵が余っていてもその場所が分からないし、分かったとしてもたどり着きにくい
・矢の回収に不公平感が残る
矢は打つと所持者が分からなくなる。何度か繰り返し使えるが壊れることもある。三百本打って十本回収とか、イベントと割り切ってはいるがちょっと。まあ分からんでもない。
私がポケットマネーで矢代を出しても良いが皆とは対等でありたい。皆で協力してゲームをしている一体感が欲しい。何か考えないとな。
レベルが高い敵は無理だな、私には呼び寄せられない。強いところに行ってもいいが敵の数が足らないだろう。
案として、人数制限を設ける。順番制にして参加したら次回は参加しない、隊列を見直す等が出た。
人数制限は最終手段にしたい。順番制にするにしても管理する側が大変だ、管理側がゲームじゃなくなる。不満を言うものも出るだろうし。
今日は隊列を見直す案の一つ、横一列に並ぶを試してみた。一人当たり六十cmくらいの幅で並んでみたが百二十m位になる。長いわー。
とりあえず、一人前に出て全速力で走る。走りながらクライネヒールをたまにかける。
敵が湧いたところで、隊列側から弓矢で敵を打つとヘイト[ゲーム上での敵対心]が隊列側に移り襲いかかっている。
最初は良かったが、段々と隊列が乱れ、最後は混戦となった。端っこの方は敵が少なくこの隊列はダメだった。
反省点や案などはゲーム内の掲示板に書き込みし、明日の開催前に再度反省会をすることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます