静かな復讐【エピローグ】

 星野の犯行の動機はやはり復讐だった。第一の被害者の東城は、魔法師として成績の悪い星野を見下し陰で奴隷同然にパシリにしていた。第二の被害者の渡部も落ちこぼれの魔法師の星野に殴る蹴るなどの暴力を振るっていたという。魔法大に進学できず魔法師としても落ちこぼれ、就職も失敗し、高校時代のいじめが忘れられない。そこで、自分の才能以上の魔法が使えるようになるデバイスを田口という男に譲ってもらったので犯行に臨んだそうだ。

 祐一はデバイスの出元が気になり、尋問をしたのだが星野は譲ってもらった男の名前以外は知らないの一点張りで話にならなかった。だが、二件の犯行を認めており捜査本部は星野を送検して解散した。

 しかし、祐一はどうも腑に落ちなかった。そのことを察した朱音は駐車場で祐一に話しかける。

「納得していないみたいですね?」

「あぁ。星野が持っていたデバイスがどうにも引っかかる」

「あれは科警研も鑑定しますし。魔法捜査係もデバイスの捜査はするって決まったじゃないですか」

「まぁ、そうなんだよな」

 朱音の言った通り、星野の捜査はすでに祐一たちの手から離れてしまっている。祐一たちにできることは何もないのだ。犯人を捕まえたらそこで役目は終える。それが機動課の宿命なのだ。

 祐一は釈然としない気持ちを抱えながらも警察庁への帰路へ車を走らせた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔法警察《機動強襲室第1係》ー静かな復讐ー 井上尚 @Nao_Inoue

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る