静かな復讐【08】
東城と渡部を殺した犯人は意外にもすぐに判明した。星野正明。二人と同じ都立高校の魔法科出身だが、魔法大に進学できるほどの魔法の才能はなかったためいじめの対象になっていたことがこれまでにわかっていた。
捜査1課3係や大塚署の刑事たちがその情報を捜査本部にあげた段階で下川は祐一と朱音、そして杉田を星野の逮捕に向かわせた。
祐一と朱音は星野の住むアパートの側にある小さな神社の社務所の陰で張り込みをしていた。
「星野戻ってきませんね・・・」
「今ホテルとかネットカフェを魔法捜査係の面々が当たってるし俺たちはここで待つしかない」
祐一の言葉に朱音はうなずく。すると、表通りにでる路地から一人の男が歩いてきた。星野正明だ。
祐一は「行くぞ」と朱音に声をかけ社務所の陰から出て行く。
祐一たちが星野の前に立つと、星野の後ろから別の場所に隠れていた杉田が彼に声をかける。
「星野正明さんですね」
「なんですか?」
星野は怪訝そうな顔をする。杉田が「警察です」と名乗りを上げると星野はポケットに入れていた手を出す。杉田がとっさに後ずさると、杉田のいた場所に火柱が立ち上がる。
祐一と朱音は少し星野から距離を取りつつデバイスを構える。
朱音の足下に魔方陣が浮かび上がる。次の瞬間、雷の鎖が星野の腕を巻き取る。
星野が舌打ちすると次の瞬間、雷の鎖は弾けて消え失せた。星野が魔力を注ぎ込んでオーバーロードさせたのだ。
星野は朱音に向かって数発の焔弾を放つ。
「おいおい」
祐一がため息まじりにつぶやき、デバイスの引き金を引くと星野の放った炎弾は静かに消え去った。祐一は魔法で炎弾の軌道にある酸素濃度を減らし、二酸化炭素濃度を高くしたのだ。
自信の炎弾を消され星野は動揺した様子だ。その隙を刑事たちは見逃さなかった。
朱音が再び雷の鎖で星野の腕を巻き取る。今度の鎖は魔力を多めに注ぎ込み丈夫にしたものだ。
そして、祐一がデバイスのトリガーを引くと黒い球体が星野に向かって飛んでいく。呪術魔法のガンドだ。朱音に気を取られている星野は祐一の放ったガンドに気づかずに黒い球体を体に喰らい意識を失う。その瞬間、数本の光の縄が星野の体を一瞬で縛った。杉田の拘束魔法だ。
「星野正明、殺人容疑で逮捕する」
気を失った星野に杉田が静かにつぶやくと、祐一と朱音はそれぞれ星野の左右に周り両側から星野の体を二人で持ち上げるとパトカーに運び込んだ。
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