静かな復讐【05】
翌日から、祐一と朱音は聞き込みに出ていた捜査員たちの情報をまとめるデスク業務に取りかかっていた。
この数日でわかったことは、被害者の東城要は会社の同僚や高校,大学の友人たちからの評判は悪くなく、恨みを買うような人間ではないということだ。
しかし、祐一はそのことに引っ掛かりを覚えていた。
「なんかおかしいんだよな」
祐一の呟きに朱音は「何がですか?」と尋ねる。
「被害者の評判が良すぎる」
「でも、それってそれだけ被害者が優秀で人柄もいい人だったってことじゃないですか?」
朱音は祐一が何がひっかかるのか分からない様子で疑問の声をあげる。
「そうだとしてもだ。100人近くの人間に聞き込みして悪口がほとんど出てこないなんてことあるか?」
祐一の言葉に朱音は指を口元に当て思考を巡らせるが、反論の言葉が出てこない様子だ。すると、近くで話を聞いていた樋口が口を開いた。
「確かに、牧村主任の言うことは一理ありますね。聞き込みをすれば大抵何かしら悪評が聞こえてくるものです」
樋口の言葉に祐一はうなずく。
「東城の短所と言えば、あえて言うならばプライドが変に高いということだ。樋口係長、これってどういうことだと思いますか?」
「そうですね。被害者が友人たちに何かを口止めしているとかですかね。または、本当に成人君主な人間なのか」
樋口はそう答えると「まぁあ、どちらも可能性のひとつですけどね」と苦笑して自分の持ち場へと戻っていく。
「やっぱり、祐一さん考えすぎじゃないですか?」
「まぁ、そうかもしれないけどな・・・」
祐一は捜査資料を眺めながら納得いかない口調で言う。その顔には疑問符が浮かんでいるのを朱音は見逃さなかった。
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