静かな復讐【04】
「通報があったのは午前6時30分。ジョギングをしていた会社員上野友則、年齢は30歳。勤務先は成海堂書店。死体発見時は日課のジョギングをしていたとのことです」
捜査副主任の大塚署刑組課長の水沢課長が事件の概要を説明している。
「被害者はJMD社員東城要、32歳。身元は所持品から判明しました。死亡推定時刻は午前2時30分前後。死因は両腕切断による出血性ショック死。両腕の切断は魔法によるものだということが判明しています」
水沢の言葉に捜査員たちがうなずく。その後地取り、鑑取り、鑑識と報告が続いたが対した成果は上げられなかったようだ。
(被害者は優秀で人柄もいい会社員、でも両腕切断と言う殺害方法から見ても怨恨の線が高いだろう・・・・・・)
祐一は捜査員たちの報告を聞きながら思考を巡らせる。
最後に科警研からの報告だ。
「魔力残渣を鑑定した結果前科者に該当する魔力反応はありませんでした。また、犯人の魔力属性ですが被害者の傷口にかすかなやけどの痕跡があったことから火系統だと思われます」
技官の言葉に捜査員たちはメモを取りながらうなずく。
「それじゃあ、地どりと鑑取りは今日と同じ組み合わせで行う。ただ、怨恨の線が高いと思われるので地どり班の半分は鑑に回ってくれ。どの組が周るかは班長にまかせる」
下川の言葉に捜査員たちがうなずく。
「それと、捜査1課3係樋口係長と魔法捜査1係係長、杉田係長、大塚署刑組課1係佐々木係長、警察庁機動強襲室の牧村主任と椎名巡査部長は予備班だ。会議の後、こちらに集まってくれ。それじゃあ、皆よろしく頼む」
捜査員たちは勢いよく立ちあがった。
すべての捜査員たちが講堂を出ていくのを見送ると、祐一たち予備班の面々は幹部席にいる下川と水沢の元へと集まる。捜査方針をたてる打ち合わせだ。
「さて、この事件どう見る?」
「そうですね、管理官の見立て通り怨恨の線だと思いますよ」
下川の問いに、大塚署の佐々木警部補が答える。その答えに、1課の樋口が同意するようにうなずいている。
「杉田はどう思う?」
下川に話題を振られた杉田は思考を巡らせる。
「自分も管理官の読みに同感です。ただ、両腕切断というのが引っ掛かります」
「どういうことだ?」
「魔法を使える人間の猟奇的な殺人の可能性も捨てきれません」
杉田の答えが予想外のものだったのか、佐々木と樋口が驚いた表情を浮かべている。
「確かにな。お前はどう思う牧村?」
「自分も杉田係長の意見に賛成です」
祐一が下川の問いに即答すると杉田がすかさず口を開く。
「ちなみに、犯人の魔法師の腕はどう思われますか?」
「被害者の両腕はきれいに切り落とされていました。その上、現場には周囲を魔法で傷つけた痕跡も見当たりませんでした。このことからホシは魔法師として腕のたつ人物だと推察されます」
祐一の答えに一同は納得したようにうなずく。
「それじゃあ、怨恨の線を主軸に洗っていこう。水沢課長は地域課に、牧村は機動強襲室第1係にそれぞれ巡回の協力要請をお願いできますか?」
下川の答えに二人は「わかりました」とうなずくと、その日は解散となった。
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