静かな復讐【03】

 祐一と朱音は大塚署から徒歩15分ほどの場所にある公園に来ていた。今回の犯行現場だ。警視庁と大塚署の鑑識課の面々や科刑研の魔法科学担当者が今でも鑑識作業を続けている。

 神田川沿いに位置するその公園は比較的人通りが少なく、高層ビルにか困れ視界も悪いため犯行にはもってこいの場所だというのが祐一の第一印象だ。

「この公園、地下鉄の駅からさほど遠くもないですし変な言い方ですけど人を呼び出して殺すにはもってこいの場所ですね」

 鑑識の作業を眺めながら朱音が呟く。犯行現場は地下鉄の駅から徒歩5分ほどの場所に位置しており、駅のそばにある交番の巡査や近所の住人の話によるとこの辺りは夜になると人通りは皆無になるようだ。よく見ると閉鎖されていないはずの川の対岸にある散歩道を歩く人影は見られない。

「ビルに隠れてるから目撃者もないらしい。魔力残査でなにかわかるといいんだけどね・・・・・・」

「そうですね。後は聞き込みに出ている捜査員さんの成果を期待する感じですかね」

 朱音は指を口元に当てる。最近気がついたのだが、朱音の思考を巡らせているときの癖だ。

「米村さん」

 祐一は顔見知りの鑑識係員に話しかける。警視庁刑事部鑑識課の米村巡査部長。

「これは、牧村さん。お久しぶりですね」

 米村は祐一が警視庁に出向していたときに何度か交流を持った警察官の一人だ。

「どんな感じです?」

「手掛かりはほぼ皆無。現在魔力残渣鑑定の結果待ちです。凶器も不明ですが、おそらく魔法による犯行で間違いないと思います」

「その根拠は?」

「検視に立ち会ったのですが、被害者の両腕の切断面にわずかなやけどの痕がありました。火で纏った刃で切ったんでしょうな」

 米村の報告に祐一はうなずく。

「火で纏った刃で腕を切り落とす。出血量から見て火の温度を低温に保って傷口がやけどで塞がれないようにしたのでしょう。今推測できるのはこんなところです。詳しい報告は捜査会議のときに報告しますよ」

「どうもありがとう」

 祐一が礼を言うと米村は一礼して作業へと戻っていった。

 離れて話を聞いていた朱音が祐一のそばへと寄ってくる。

「魔法による犯行ですか・・・」

「まぁ、だからこそ俺たちがここに呼ばれたわけだが」

 祐一の言葉に朱音はうなずく。そして、自分の言葉が上滑りしているのを祐一は感じ取っていた。

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