静かな復讐【02】
機動強襲室の業務の一つに担当地域の魔法関連事件に対する地元警察への指導と協力というのがある。今回の祐一たちの業務がそれに当たる。
大塚署にやって来た祐一と朱音は受付で身分証を提示すると、制服を着た係員は愛想よく「4階講堂の方へお願いします」と告げた。祐一は軽く礼を言うと、エレベーターに乗り込んだ。
4階に着くと右手にある講堂がざわついているのが伝わってきた。祐一たちがやって来たのは、「魔法師両腕切断殺人事件特別捜査本部」と名付けられた捜査本部だ。祐一は朱音を伴って講堂に入ると、U字型に並べられた机の島のちょうど曲線に当たる場所に見知った顔を見つけ近づいていく。すると、向こうも気づいたようで祐一の声をかけてきた。
「牧村、久しぶりだな!」
「お久しぶりです。下川管理官」
話しかけてきたのは、警視庁捜査1課管理官の下川昇警視。祐一が所轄の刑事課にいたときの先輩だ。
「すまんが、力を貸してくれ」
下川がそう言って差し出した手を祐一は「こちらこそ」と言って握る。すると、下川は朱音に気づき「そちらは?」と尋ねる。
「彼女はこの間うちに配属になった椎名朱音です」
祐一の紹介され朱音は「よろしくおねがいします」と言いペコリと頭を下げる。
「こちらこそよろしく頼む」
下川は笑みを浮かべて朱音にも手を差し出し握手をする。自己紹介がすんだところで祐一が険しい表情で口を開く。
「それで、どんな状況ですか?」
祐一の問いに下川はうなずくと、祐一をホワイトボードの前に促す。
「被害者はJMD社員東城要、32歳」
被害者の所属を聞き朱音は驚きの声をあげる。
「JMD社ってあの?」
「そうだ。魔法師のデバイスなんかを作ってる会社だ」
朱音の言葉に下川が答える。祐一もその会社には聞き覚えがあった。
確か、魔法大の優秀な魔法師や魔法工学士の就職先として人気の会社だったはずだ。
「検視の結果、死因は両腕切断による出血性ショック死。鑑識がかすかな魔力残渣を検出 したため魔法師の犯行も視野に入れて捜査中だ。詳しい報告は捜査会議で報告させる」
下川の言葉に祐一はうなずく。
「人定は済んでるんですね」
「あぁ、バックのなかに免許証と社員証が入っていた。それと、財布の中身だがカードや現金は盗まれた形跡はなかった」
「それじゃあ、流しの犯行の可能性は低いですね」
「ああ。今、捜査1課殺人犯3係1班と魔法捜査1係1班、それと刑組課を中心とした所轄の刑事が手分けして地取りと鑑取りを中心に動いている」
「なるほど。・・・・・捜査会議は何時からですか?」
「1回目の会議は18時からだ。現場に行くのか?」
「はい。一応現場は見ておきたいので」
祐一の答えに下川は納得したようにうなずくと、祐一は朱音をつれて講堂をあとにした。
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