静かな復讐【01】

 警察庁警備局第3特別公安課第1機動強襲室第1係主任ー牧村祐一はオフィスでニュースをチェックしていた。祐一の隣では配属から早くも3ヶ月が経過した新人・椎名朱音がせっせと報告書を仕上げていた。

 そんな折、気になる記事が祐一の目に留まった。

「祐一君ちょっといい?」

 声をかけられた祐一は顔を上げる。第1機動強襲室第1係係長の葉山凛が険しい表情で祐一のことを見ている。祐一は先程目に留まった記事に見当をつけて立ち上がり、係長席に歩み寄る。

「文京の事件ですか」機先を制して言うと、凛は満足げにうなずく。

「さすね。どうしてわかったの?」

「これで」祐一はそう言って携帯端末を見せる。

「殺されたのは魔法師らしいの」

「そうみたいですね」

 祐一はうなずくとその事件を思い出す。昨日の10時過ぎ、文京区の神田川沿いにある公園で魔法師の死体が発見された。死因は、両腕を切断されたことによる出血性ショック死。凶器は不明。派手な殺害方法のためどのメディアもトップニュースとして取り上げていた。

「それで、一応ということで捜査1課から応援要請がかかったの。朱音ちゃんと大塚署に行ってきて」

「やっぱり、うちにも応援要請ですか?」

「うん。殺害の凶器に魔法が使われてることがわかってね。それでうちにも声がかかったいうわけ」

「1課には魔法捜査係もあるでしょうに」

「腕を真っ二つに切れる魔法を使うホシを追うなら実力者をつけたいってことなんじゃない」

 凛の言葉に祐一は「なるほど」とうなずく。

「そういうことで、よろしくね」

「了解」

 返事をした祐一は、一旦自席に戻ると朱音を伴ってオフィスを出ていった。

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