第10話

久し振りに会った彼女は、近所のおばちゃんのように声をかけてきた。

いつもの彼と思って対応していたら、彼女だった。

彼女と気付くまで、少し時間がかかった。


いつもの、トラのクロコへの対応と違う?

その対応の様子で、違和感を感じた。

あ、彼女はくろにゃんだ!!

ゆっくりと側に来た彼女に

「久し振りやな!、どないしてたん?、心配しててんで?」

と声をかけながら、いつもご飯をあげていた場所へと誘導していくと、私にすり寄りながら付いてきた。

みんなのご飯を食べる場所に行くと、彼女は立ち止まった。

あれ?彼女が来ていた時は、まだ外の入口で食べていたっけ?

抱っこしてみんなのご飯を食べる場所に上げた。

一生懸命食べている。良かった、と安堵した。

野良猫の彼女は、ちゃんと生きていた。

シャワーを浴びたばかりの私は、身仕度を整えてから、すぐ彼女の元へ行った。5分もたっていないと思う。

彼女は、もう居なかった。

飼ってあげたい。そんな気持ちは、おこがましい。

彼女は、ちゃんと生きていっている。

しかも1人で。

私の元に2人を置いて、自分もここにいればご飯の心配なんていらないのに。

自分の子供のために、1人を選んだんだ。

自然界では普通なのかもしれないが、人間の私は、とても最下層なんだな、と感じるほどに、敬意を表したい。



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サ カ ノ ボ ル @oshiro3

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