第8話

水色の、汚れたコンテナ籠のようなものをじっと見つめ、私は大泣きしていた。

父親の膝に乗せられて、大泣きしている幼い私が見えた。

なぜあの時、泣いていたのだろう、思い出す努力をしていた。

そうだ、あの時も、1匹目の犬が死んだ時ぐらい、ショックだった。

だから、幼い私は、忘れる努力をしていたのだ。

思い出すと辛いから、忘れる努力をしていたのだ。

水色の、汚れたコンテナ籠の中には、誰かにひき逃げされた、白い犬が入っていたのだ。

思い出したことを話したいと思う人は、もう私の側には居なかった。

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