終幕
「終わった?」
いつの間にかひょいと顔をのぞかせた人物はこの世界では瀬田と名乗っていた旅人だった。
「今回の“騎士”は三好だったみたいだね、……あいつ手際いいな」
“騎士”。仮想世界にノアの守り手として働き、記憶を失う時の旅人。
呼び方がないと不便ということでいつの間にか騎士と呼ばれるようになったのだ。
「俺ははもう“飛ぶ”よ。鈴もここが消える前に早く飛びなよ!」
二発の銃声の後、静けさが戻った。
「あれ、みんなもう飛んじゃったか」
遅れてきた彼はこの世界では嶺井と呼ばれていた旅人。
「この世界で“ノア”が男だったのは……ウチの仕事が女性禁止だったからかな。肉体はどう違っても転生するってこと……。ああ、もう飛ばなきゃ」
ひとつの銃声が鳴り響く。
彼もまた次の仮想世界へ飛んだ。
数分後にはまだ骨組みだった仮想世界はぼろぼろに崩れ消えた。
いつか、また仮想世界が作られ、彼らが破壊し、また作られる。
守るためか、生きるためか、復讐か、真実を追うためか
それぞれの思惑が、また旅のチケットになるとも知らずに、彼らは飛ぶ。
次の仮想世界は――どこ?
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