第二幕
ピリッとした緊張感がドア越しにも伝わってくる。
何かがこの研究室の中で行われている。
別に敵がいるという感じでもないけど……。
なんか嫌な予感がする。
さっさと気にせず入ることにした。
「失礼します。こんに……」
だいたい予感は当たるほうだから気にしたほうが良かった。
研究室の中では、
「いやああああああ!!ストォッッップ!!」
「ははは!!!待ったなし!!!」
仕事をさぼって謎のゲームをする研究員たちがいた。
何をしているのかと研究員らを後ろからのぞくと将棋をしているようだった。
チェスならわかるのだがどうにも将棋は苦手だ。
そう思って彼らを見渡すと槙と瀬田もいた。
「そういえばもうそろそろ夕霧が来るは……て、え、ぎゃああああああ!?」
私の顔を見た瞬間絶叫しまくる研究員たち。……失礼な!!
槙と瀬田は笑いをこらえきれないという様子でこっちをみてくる。
(本当にむかつくやつらだな)
「槙も瀬田もひどいなあ!!」
わざとらしく大声で言う。
予想道理、研究員たちはまたもや悲鳴を上げる。
やっぱり気配に気づいていなかったらしい。
「で?仕事をさぼってなんで将棋なんかしているの?」
本当なら今頃研究班長の実験に付き合っていたところだったはずなのだけれど……。
「あ、はははっ!!い、いやぁ~。抹茶菓子食べる?夕霧が好きなやつあるよ?」
「そ、そう!ほ~ら!抹茶&クッキーアイス!全部あげる!」
研究所員は人の好きなもので口封じしようとしているし……
好物を押し返し注意しようと口を開きかけたとき――
「いやいやごめんね~。ああ、できているよ~マキ君、セタ君、ユウギリ君」
ぼさぼさ頭にメガネと白衣、そして眠いのか目が細い。
南方研究所長クリス・カイロンが実験室の奥から出てきたのだった。
ひとつだけいえることは、発明能力はすごいがまともな仕事をしているところは見たことがない。
というかまともな発明品を見たことがない。
そして有名なのがシスコン兄キともいわれる妹愛。
「さあ!見たまえ!研究班の自信作!いや~苦労したよ!」
そこにあったのは三つの武器だった。
たぶん私の武器は真ん中の銃じゃないかな。
手に持ってみるとちょうどいい重さで手にしっくり来た。
「……カイロン室長。なんかこれ……重くないですか?」
いや、重い銃なんかいくらでもある。軽量化のほうが難しいが、ここの研究班員たちの腕は確かなのだから違和感を覚えたのだ。
「ふっ、さすがSpecialブラッドバルーンスナイパーユウギリ君。それはね、後ろのロックを外して組み替え、魔力を流すと……なんとソードになるのだよ!」
カイロン室長は絶賛をうけると予想していたらしいが、みんなが注目したのはそこではなく……
「『スペシャルブラッドバルーンスナイパー』って深夜テンションで頭おかしくなっていてもそれはないでしょ……」
「というか長くない?」
「さすがネーミングセンスゼロ」
瀬田、グレアム、槙にばっさりきられる。
「ひ、ひどいっ!グレアムまで……」
グレアム・カイロン。性格は元気系。司令部副班長。
室長と同じ桃色とオレンジを混ぜたような髪色、毛先をそろえたショートヘア―が特徴だ。
言うと怒られるけど、仕事のときにメガネをかけたときや、いじられたときのなよなよとした感じが、ああ、やっぱり研究班長の妹だなー、なんて思う。
「ねえ、グレアム?なんで司令部がここにいるの?」
するとものすごく眉間にしわをよせる。本人曰く無意識らしい。
「戦闘要員はそれぞれの配置に戻って。とくに夕霧君。フロア・零は最深部ですから敵が来ることはめったにないとはいえ、ここの守護が仕事でしょう?わざわざ激戦区に行ってふらっといつの間にか消えられるよりもちゃんと呼びますから――」
またお小言が始まった……
「OK、嶺井のとこによってから持ち場に戻ります!ではサヨナラ~」
後ろからグレンの殺気を感じたが、気にせずに研究室を後にした。
新しくもらった銃をホルスターへと入れて。
グレアムはポケットから通信機を取り出すと、司令班班長の番号をコールする。
「……あ、班長?ええ、夕霧君はフロア・4に向かったようです……ええ、では私もそちらに向かいます」
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