第2話 戦闘。
「合体完了、機体の状態は?」
コックピットに通信が入ってきた。巨大ロボットに乗っているもう一人のパイロットからだ。
「問題ないわ」
サブモニターに表示されている機体データを報告していく。
成実の報告が終わるのを待っていたかのように、敵ロボットが二足走行で向かってきて、一歩踏む度に発生する轟音と激震によって、道路に巨大な足跡を刻み、止まっている車を浮き上がらせ、建物のガラスを割っていった。
「こっちも行くよ」
パイロットからの通信の後、モニターの映像が揺れながら前方に進み始め、ロボットが二足走行を行っていることが分かった。
ロボットのボディアクションは、もう一人のパイロットの担当なのだ。
二体の距離が縮まり、敵ロボットが鉄球仕様の両手を突き出してくるとロボットの五本指仕様の両手が鉄球を受け止めた。
その後すぐ敵ロボットの背中にある二本の煙突が真っ黒な煙を吐き出すと、ロボットの両腕は強引に曲げられ、二体は顔を突き合わせた状態になり、モニターの前面がバケツをひっくり返したような頭で埋め尽くされた。
敵ロボットは、首の関節を引き伸ばすなり大きく振り上げ、ロボットの頭部に頭突きを当ててきた。
頭部への直接攻撃に映像は激しく乱れ、それに比例してコックピットへも振動が伝わって来て、成実はシートから落ちないように体を強張らせた。
「やってくれたわね~」
敵ロボットの不意打ちに成実は毒づいた。
「今のダメージは?」
「ブレードアンテナが若干歪まされたわ」
損害データを報告する。
「こっちもお返ししないとね」
返事の後、敵ロボットがどれだけ真っ黒な煙を吐き出そうとも、ロボットが力負けすることなく、両腕を一気に伸ばして押し返した。
敵ロボットが、バランスを崩したところで、右ストレートパンチを打って、バケツ頭に鋼鉄の拳ならではの強烈な一撃を与えた。
その後、パンチを連打して重たい打撃音を鳴り響かせ、仕上げに右ストレートキックを腹部に叩き込んで蹴り倒したのだった。
背中から倒れ道路に大きな窪みを作った敵ロボットは、上半身を起すなり右手の鉄球を発射してきた。
「防御して!」
成実の指示に、ロボットは両腕で本体を覆う防御体勢を取った。
それによって本体へのダメージは免れたが、ロボットは後方に押され、コックピットに大きな振動が生じ、成実は頭突きの時以上の振動に見回れた。
「大丈夫かい?」
「平気よ。そっちは?」
「こっちも問題無い。機体の状態は?」
「今の攻撃で両腕の装甲が歪されたわ」
互いの安否確認をした後、機体のダメージを報告した。
「それなら別の腕に換装しよう」
「次の攻撃が来るわよ」
モニターには、左の鉄球を打ち出す寸前の敵ロボットが映っていて、ロボットが左横飛びで攻撃を回避すると、モニターの右側を巨大な鉄球が通り過ぎていくのが見えた。
「グローブアームと換装しよう。Cブロックから発射して」
「それだと真後ろから飛んでくることになるわよ」
「いい考えがあるんだ」
「この前のドリルアームの時みたいにならないでよね」
「大丈夫、うまくやるさ」
「じゃあ、任せたわよ」
サブモニターに武装一覧と街の地図データを同時に表示させ、指示された武器名を左手で、ブロックを右手でタップしていった。
画面操作が終わると、ロボットの後方にあるビル群の一区画が真横にスライドして、露出した発射口から四角いブロック状のものが発射された。
「いくよ!」
掛け声の後、ロボットは迫ってくる鉄球を前に道路を蹴ってジャンプし、宙返りしながら鉄球と敵ロボットを飛び越えた。
ロボットの一連の動きにモニターの映像が目まぐるしく動く中、成実は画面操作を行い、ノーマルアームをパージした後、本体とグローブアームをリンクさせた。
その操作により、ロボットの後方を飛んでいたブロックは二つに分離して、ボクシングのグローブに変形し、ジャンプ中のロボットを攻撃しようとした敵ロボットの背中に体当たりして体勢を崩させた。
パージしたノーマルアームが落下して建物を破壊しながら地面に突き刺さる中、ロボットは両腕の接続部から稲妻のような光線を発射し、グローブアームの噴射口に当て、磁石のように引き寄せて装着した。
「換装完了したわ」
成実が、完了の文字が表示されているサブモニターを見ながら応答している間、ロボットは胸の前で両拳を突き合わせ、硬質な音を鳴り響かせた。
そうして体勢を立て直した敵ロボットが右パンチを打つと、左パンチで対抗し、ノーマルアームで殴った時以上の打撃音を鳴り響かせながら鉄球を木っ端微塵に打ち砕き、左鉄球も同じやり方で破壊した。
「倍返しだ~!」
両手を失った敵ロボットを連続で殴った後、両腕を突き出したダブルパンチを胸部にぶち当てた。
強烈な直接攻撃よって、敵ロボットは右ストレートキックの時以上に遠くへ吹っ飛ばされ、ビル群に叩き付けられて転がっていき、自身によって破壊した建物の残骸に埋もれて見えなくなった。
「そろそろトドメといこうか。ダブルグローブパンチの発動操作よろしく」
「任せて」
パイロットの指示の後、成実は必殺技一覧のデータを表示させ、技名をタップするとグローブアームの左手が分離して、右手と合わさって二倍の大きさになり、グローブ全体から真っ赤な輝きが溢れ出した。
それと同時進行で両足の膝下装甲が上向きに開き、中からアームと繋がったキャタピラが現れ、踵に当たるとロボットは爪先立ちをして、後はスライドするように乗っていった。
キャタピラが回り、二足走行の倍のスピードで直進していく中、ロボットは右腕を引き絞った姿勢を取った。
起き上がった敵ロボット最後の悪あがきとばかりに、腹部から手よりも大きな鉄球を打ち出してきた。
ロボットは、真っ赤に輝く右腕を突き出し、鉄球を破壊しながら突き進んで、敵ロボットの腹部を貫いて上下に分断させた。
それから数十メートル離れたところで止まると、敵ロボットは閃光を放った後、大爆発を起こして跡形も無く吹き飛んだ。
成実ね達の乗るロボットが勝ったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます