第26話 「二重回しの赤い男」

「キミタチ、赤い色と青い色、どちらが好きかね?」

 二人の小学生が、下校途中に不思議な男に遭遇した。

 男はいまどき古風な二重回しを着ており

 …その布地は血のように赤かった。

 そうして男は電柱に身体を半分隠しながら、こう聞いて来たのだ。

 子供たちはとうぜんのように、この不審者を警戒した。

 …なんとなく、どちらかの色を選ぶと自分たちの身に危険が及ぶ

 そんな気したのだ…しかし彼らの意に介さずに男は首をふると、

 ものかげから何かを取り出し、こう言った。

「ちなみにワタシはタケシのお兄さんが好きだ。」

 それを見て、子供たちはおどろいた。

 そこには、男の脇に抱えられたタケシの兄さんの姿があったのだ。

「では、諸君。さらばだ。」

 そうして、高笑いを残しながら、赤い二重回しを着た怪人は去って行った。

 あとに残されたのは、ただぽかんと突っ立つ二人の子供だけであった…。

 

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