第20話「幽霊物件」

 その家に入ると、ひどく身体が重く感じられた。

 無理もない。この家は以前自殺者の出た家だ。

 縁起をかつぐわけでもないが、私はためしにスーパーで買った塩の

 パックを開けて、中身の塩を白皿の上に盛ってみる。

 すると、塩は三角の山を作るまでもなく、どろどろとした白い液体

 へと変化してしまった。

 …これではこまる。

 これから二時間後に、私はこの部屋を客に紹介しなければならない。

 それまでになんとかしないと…。

 そうして私は、苦肉の策として一人の人物に電話をすることにした。

「ちわーっす。先輩、なんの用事っす…うぉ!?」

 玄関を開けた途端に、見ればはっきりとわかるほどの白い固まりが、

 一斉にタケシの兄さんに群がって行く。

 さすが、タケシの兄さんである。

 そして彼が幽霊に担がれてどこかへ行ってしまうと、部屋が見違えた

 ほどに明るくなるのが感じられた。

 これなら、安心してお客様に部屋をお貸しできるだろう。

 こうして私は安堵の息をつくと、携帯電話を手に取ったのだった…。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る