第18話「貧乏神」

 タケシが勉強机で貧乏揺すりをしていると、タケシの兄が怒り出した。

「こらタケシ。貧乏揺すりをしていると、貧乏になっちまうんだぞ。」

 しかしタケシは話を聞かずに貧乏揺すりを続ける。

「んなわけねーじゃん。貧乏神がくるわけじゃなし…。」

 その瞬間、いきおいよくドアが開くとぼろぼろの服を着たじいさんが

 タケシの兄にすりよってきた。

 そして同時にタケシの兄の電話が鳴る。

「はい、もしも…え?俺の口座のカードが勝手に使われてる?」

「いえ、そんなサラ金に手ぇだしたこと無いんですけど…。

 ええ?生命保険解約!?マジやめてくださいよ!」

「いや、違いますし、戸籍なんて俺売っていませんから!

 臓器バンクなんかと契約していませんから!」

 そうして、真っ青な顔をするタケシの兄は電話を切るとタケシに言った。

「…なんか、今から迎えが来るって。俺、これからマグロ漁船に乗って、

 臓器バンクで全世界に臓器売るって言われたんだけど…どうしよう。」

 すると、表のほうで車の停まる音が聞こえた。

 何人かが階段を上る音も聞こえる。

 それに対し、タケシは静かに言った。

「なんか…ごめんな兄ちゃん。もう、貧乏揺すりやめるよ。」

 

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