第17話「猫又」

 長生きをした猫は猫又になる。

 猫の年齢は人間換算にすると7倍になるから、

 10年間うちで生きたミケは今年で70歳のおばあちゃんになるはずだ。

 でも、しっぽは二股になっていないし、襖だって開けれるけれど

 閉めたりはできないし、もちろんしゃべることだってできやしない。

 そうしてその日も縁側のばあちゃん愛用のざぶとんの上で丸くなっている

 ミケを見ていたら、なんだか様子がおかしいことに気がついた。

 ミケが、じっと庭のほうを見つめているのだ。

 そして、その垣根の向こうの道路を見つめているようだ。

 何があるんだろう。

 そう思っていたら、通りの向こうから人がやって来た。

 見れば、それは近所に住んでいるタケシくんのお兄さんだった。

 この子は何を真剣に見ているんだろう。

 そう思ってミケを見た私は目をうたがった。

 …ふいに、ミケがすっくと二本足で立ったのだ。

 しかも、一本だったしっぽが途中で分かれ二股になっている。

 そうして、ミケはこう言った。

「タケシノニーシャ!」

 そうして、あっという間に垣根の中にもぐりこむと、

 タケシのお兄さんが急に悲鳴をあげて、そのまま道の向こうへと

 移動してしまったのだ。

 あとで聞いた話では、うちのミケがタケシのお兄さんを片手で

 かついでどこかへと連れ去ったということであった。

 今日、私はけろっとした顔をしたミケが帰ってくるのを見計らい、

 迷惑をかけたということでお詫びの品を持ってタケシのお兄さんの

 家に行こうと考えている。

 …それにしてもミケのやつ、何もタケシのお兄さんをきっかけに

 化け猫デビューをしないでもらいたいと思う…。

 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る