第13話「三番目のトイレの…」
…酔いがまわっていたのかもしれない。
ひさしぶりに同窓会で飲んだ俺たちは
小学生のころに通った校舎に遊び半分でしのびこむことにした。
最初こそ警備会社に連絡がつくんじゃないかとびくびくしていたが、
歩き回っているうちに気も大きくなり、行動も大胆になっていった。
理科室のガイコツに懐中電灯を当てたり、
音楽室のピアノの鍵盤を叩いてみたり、
そしてとうとう、三番目のトイレであの有名な幽霊を出してみよう
ということになって、俺たちは女子トイレに忍び込んだのさ…。
そして決められたように三番目のトイレを叩くと、俺たちは言った。
「花子さぁ〜ん!」
誰もいないトイレ、女子なんかいるはずのないトイレ。
俺たちは内心笑っていたよ。
そんなもん、いるはずないってさ。
…でもな、いたんだよ。
とつぜん、ぎぃ〜っと扉が内側に開いて
…そこに、人がいたんだ。
間違いない…そいつはタケシの兄さんだった。
んでさ、そいつは暗あ〜い顔をしながらこう言ったんだ。
「良い年した男二人が、いったいなにをしてるんですか。
警察を呼ばれても、文句いえませんよ?」ってね。
そこで俺たち、はっとしたね。
おせじにも言えないが俺たちは二十代の大人だと、
そして、よりにもよって女子トイレに入っていると。
そのあと、俺たちは逃げるようにトイレをあとにしたよ。
幸い、警備会社の人間はまだ来ていないようだった。
つまりあの体験は俺たちをひとまわり大人にしてくれたというわけさ。
…それにしても、タケシくんのお兄さんは、いつもああやって俺たち
みたいな奴らに呼ばれちまうんだろうか?
…まったく、ご愁傷なこった。
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