第12話「ロッカーの少女」

 このあいだ奇妙な体験をしたの。

 夜、駅地下のロッカーに荷物を預けようとしたら

 後ろにおさげをした女の子が立っていてね、

 時計は夜の十時をまわっているのに女の子はひとりみたいだった。

 だから私、その子に聞いたの。

「ねえ、お母さんはどうしたの」って。

 でも、そのときちょうど思い出したの。

 たしか数年前にここに赤ちゃんが置き去りにされた事件があって、

 その子は死んじゃうんだけれど、今でもその幽霊が出るって…

 そうしたら、その子は耳まで裂けそうな口でにいっと笑ってね。

「ママは…お前だああ!」

 って言いながら、

 後ろにいたタケシくんのお兄さんを引っぱって行ったわ。

 それで…私は家に帰ったのだけれど、今でもたまに考えるの。

 …タケシくんのお兄さんって…一応、男なのよね?

 

 

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