第9話「河童まつり」

 その年、村では不作が続き

 河童まつり用のきゅうりにも困窮するほどであった。

「こまったのお。

 このままでは河童さまが怒って川を暴れ川にするかもしれん。」

 村長がそう言うと、村の長老はこう言った。

「しかたがない、タケシの兄さんに来てもらおう。」

 こうして、その年の河童まつりには急遽、

 きゅうりの台の上にはタケシの兄さんが載ることとなった…。

「どうかのお、うまくいくかのお?」

「河童さまあ、どうかお納めくだせえ。」

 すると、にわかに天がかき曇り、

 川から無数の河童が首を出す。

「おお!河童さまだ!しかもたくさん現れなすった!」

 すると、河童たちは川岸の台のほうへと近づくと、

 そのままタケシの兄さんを載せたまま台を担いで持って行く。

 その表情はどことなく嬉しそうであった。

「おお!喜んでおられる!喜んでおられるぞお!」

 こうして、台の上で揺らされて若干酔っているのか、

 気分の悪そうなタケシの兄を載せたまま、

 河童たちは、わっしょい、わっしょいと歩いて行き

 …そのまま川の中へと姿を消した。

「…行ってしまわれた。」

 村長の言葉に、長老は大きくうなずいた。

「これで、今年は安泰だろう。」

 気がつけば、空もいつしか晴れていた。

 こうして、村人はその年もつつがなく

 河童まつりを終わらせる事ができたのであった…。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る