第5話「ベッドの下」

 観光リゾートに遊びに来たミカとサヨ。

 しかし、宿泊するホテルの部屋に荷物を置いたとたん、

 ミカが急に声を上げた。

「ねえ、タケシの兄さんに電話をかけない?」

 それを聞いたサヨは耳を疑った。

「ええ?なんで呼んでもいない人間を夜に呼び出すわけ?」

 時刻は夜の8時過ぎ、

 いくらなんでも人を呼び出す時間帯ではないはずだ。

「いいから、いいから…。」

 そうして、ミカはサヨの手を引っぱると、

 携帯を片手にホテルの部屋から飛び出した…。

 …その五分後、サヨは自分の目を疑った。

 先ほどまで自分たちのいた部屋から、一人の男が出てきたのだ。

 しかも片手には斧をもち、

 もう片方の腕にはタケシの兄さんを抱えている。

「やっぱり…あの男はベッドの下に隠れていたのよ。」

 そしてミカは男の姿が見えなくなると、

 ほっとしたように胸をなでおろした。

「よかった、行ったようね。これで安心して観光を楽しめるわ。」

 しかし、その様子を見てサヨは心配そうな声をあげた。

「え?でも、またさっきと同じようなことが起こったら?」

 すると、ミカはさっき使った携帯をふってみせた。

「そしたら、またタケシの兄さんを連れて行ってもらいましょう。」

 そうしてこの夏、

 二人は何事も無く楽しいバケーションを送ることができたのである…。

 

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