第3話 水流放て!3
「——もし作戦中に目標でない敵を見つけたのが自分だけで、他の人に教えていたら敵に逃げられそうだという状況になったときどうする?」
黒板には様々な状況の絵が描かれ、それに赤で線が入っていたり印がついていたりしている。
「私ならそのチーム内で抜けても大幅な戦力ダウンにならない人を1人か2人連れて行きます。他の人にはそのまま作戦を実行してもらって追いかける時についてきてもらった人に説明します。多分」
「まぁ普通はそんな感じよね。でもそれじゃ駄目。作戦っていうのはそもそも成功できるであろう必要最低限の人数で組むの。28人しか試合には出られないからこそ必要以上の人数を割くことは滅多にない。だからそこから司令塔が抜けて更に数人抜けたらどうなる?作戦の失敗はほぼ確実よ」
涼風の返しに水希は何も言えずただただ座ることしかできなかった。
「まぁこれは答えられると思ってないからいいのよ。特別授業は終わり。今からは射撃練習するから」
「えっ?」
突然の授業の終了と射撃練習の開始に戸惑いを隠せずに思わず声が出る。
「発注してた武器が届いてね、司令塔用に作っていた武器だから練習しとかないとね。さっきの問題の答えでもあるしね」
わけがわからないままとりあえずついていくとそこはつい最近できた長距離射撃練習場だった。
「もう
練習場を覗き込みながら涼風が言う。
耳を澄ますとフェンス1枚隔てられた向こう側から微かに射撃の音らしいものが聞こえてくる。
「雪水先輩も撃ってるってことは発注してた武器っていうのは司令塔用のライフル銃とかですか?」
「正解、ライフル。と言っても今までのとは全然違うよ。水鉄砲は本物と違って弾速がなくて距離も短い。それをできる限り改良したのがこれ」
そう言いながら練習場の前に置かれていた木箱を開けて中身を取り出した。
「長さ約1m、重さ約500g、可能装填数5発、最大射程150mの超長距離射程大型ライフル」
「ほぉぇ〜」
あまりの大きさに言葉を忘れ口を開けて止まった。
「ここでさっきの問題の答えね。司令塔であるあなた1人だけがその場に残り、10秒以内に敵を射抜きなさい。そしてすぐに味方に追いつきなさい」
「えぇ!?10秒ですか!?」
大型ライフルに気を取られていた水希だったが耳に入ってきた驚きの言葉に我に返る。
「うん。10秒が限界よ。それ以上かかるようなら敵には逃げられるし味方にも追いつけなくなるからね」
「でもそれってものすごく高度な射撃技術が必要になりますよね?」
「だから練習場を新しく作ったのよ。期待してるからね」
満面の笑みで肩を叩かれ大きな期待とプレッシャーが重くのしかかる。
しかし水希はその不安な気持ちの中、少しのやり甲斐を感じると確信していた。
もしこれをうまく使えればチームの勝利に繋がるはず…!それよりこれをうまく使えたら超かっこいいよね?
「はい…頑張ります!」
前に出された大型ライフルを受け取ると更に興奮し早く撃ちたくなる。
「じゃあ射撃練習頑張ってね。そっちの方は雪水に聞いて、私はあまり詳しくないから」
「はい!」
そう答えると練習場の中に駆けていった。
練習場には寝転んだ雪水と立っている
入ってきた水希に最初に気付いたのは水湊でだいたい50mほど先から手を振っている。それによって瑠璃と雪水も水希の存在に気付き寄ってくる。
「もう
「宇美の講習…きつそう…」
瑠璃が発した言葉に雪水が反応する。
「全然ですよ!為になる話でした!というか関係の無い話ですけど涼風先輩って同い年の人からは宇美って呼ばれますよね。どうして宇美なんですか?」
「どうしてって、理由はないけど単に私は呼びやすいからかな」
「私も…」
ほんの少し気になったことを聞いてみたものの大した答えは返ってこなかったがそもそもあまり気にはなっていなかったせいかそこでこの話は終わりを迎えた。
「ま、それは置いといて、とりあえず講習終わってここにいるってことは新しいの、練習しに来たんでしょ?」
瑠璃がそう言うのに合わせて雪水が持っていた水希のと同じ大型ライフルを少し上にあげた。
「はい!早く撃ちたくてウズウズしてます」
興奮を隠しきれずにしていると歩いてこっちに寄ってきていた水湊がちょうど3人の輪に入り微笑んだ。
「まー色々と説明するよりさ、1回自分でどんなものか体験してみたら?」
「そうだね。水湊の言うとおり、1回撃ってみるといいよ」
「頑張れ…」
3人に撃つことを勧めらて射撃位置へと移動する。
「あの人型の的に向かって撃てばいいんですよね?」
ライフルをとりあえず構えてスコープを覗き込みながら尋ねる。
「うん…。あと別に…立ったままじゃなくても…いい…」
そういえばここに入ってきた時、雪水先輩は寝転んでたなぁ確か。
「はい…今回はこのまま撃ちます」
狙いを定めていると辺りの静けさからか緊張感がひしひしと身に染み、集中力がさらに増す。
標準を的に合わせできる限りの静止を心がけてタイミングを待つ。
振れがほとんどなく標準が的の中心を捉えると、水希は引き金を引いた——
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