第7話 あなたはどうして

部活の時間が終わり、俺はいつも通り目の前にいる西沢と一緒に

帰ることにした。


「西沢ー、今から帰るぞ」

「新城くん、あの私と一緒でいいんですか?」

「いいんだよ。どちらにせよ道は一緒だろ」

「一緒ですよね…」

「だから一緒に帰ればいいだろ」

「はい、そうですよね」


俺たちの今日もいつも通り一緒に帰り道を帰った。

といってもいつもと違って西沢の口数は少なかった。


「あの、ひとつ聞いてもいいですか?」

「どうしたんだいきなり?」

「どうしていつも通りに接しているんですか?

新城くんは目の前の私が誰かも分からないのに…」

「そんなの簡単だろ。例えお前が、西沢、千秋、佐野の誰だったとしても

いつもと変える必要がないからだ。例えお前が今は何者か分からなくても

お前はお前なんだ。そのことは変わらないだろ」

「うん!」

「じゃあ、また明日な」

「また、明日もよろしくお願いしますね」



家に着いて、夕食を食べた後に

今日の1日の出来事を振り返ってみたが

正直この一環の謎はどんなに考えても分からない気がした。


はぁぁ、全く無茶苦茶な状況だな。それもこれも諸星さんが

台本を渡したから余計に訳分からなくなってるんだよな。


「待てよ…」


俺はふと疑問に思ったんだ。確かに普通なら誰が誰かを把握するかが

大切だと思ってた。だが根本的な問題はそこじゃないことに

俺はこの時に気付いてしまったんだ。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る