第5話 混乱

起きたのは朝の9時だった。

その日は今までの風邪で体調不良が続いていたせいか

遅くまで寝込んでいた。

体は熱が下がっていたため軽かったが、頭の方はまだ重かった。

熱は下がっていたし、時間は遅れるかもしれないが学校に行くことにした。

家から出た時、ドアフォンの近くに包みが置いてあるのに気付いた。

その中にはお弁当と西沢の手書きの文章の紙があった。


かつやくん、体調の方は大丈夫ですか?

かつやくんのためにお弁当を作っておいたので食べてくれると嬉しいです。

また一緒に学校にいこうね。


お弁当の中は師走テーマパークの時と同じお弁当だった。

「ありがとな本当に。よーし、体調のことも考えて今日はこのお弁当を

家で食べてからあいつの部室に寄るとするか」


昼食は家で大人しく西沢の作ってくれたお弁当を食べていた。

その内容はあの時と同じだったが味はその時以上に美味しかった。

弁当を全部食べたあとはそのお弁当を綺麗に洗って、

包みも洗濯することにした。

部活までの時間、午後にどう暇を潰すかを考えていた時

俺の携帯が鳴った。


「はい、もしもし?」

「お、新城くんか!どうだ、風邪の方はどうだ?」

「はい、おかげさまで元気になりました。今日はそちらの部活に

寄ってこうかと思ってます」

「お、そうかそうか。来てくれると嬉しいぞ!それにな、

ちょっとなややこしいことになったんだ」

「ややこしいことって何ですか?」

「それはその時に話すからさ!じゃあ、待ってるよー」

そう言って諸星との会話を終えた。

あの人ややこしいことって言ってたけど今度は何が起こるんやら。

物事のカオスの象徴のあの人が言うんだからとんでもないことだろうと思う。


時間も経ち頭の方はまだ本調子ではないが部室の方に顔出しすることにした。

部室へ向かう途中たくさんの部員がどこかへ向かうところを見た。

西沢たちはいなかったがその部員たちは別の場所での活動の準備を

しに行くところだと思う。


「失礼しまーす」


部室の中には諸星さんと、佐野、西沢、そして千秋の姿があった。


「おお、新城くんかー!いやーよく来てくれたな!」

「いえいえ」

「早速だが大変なことになってしまったのだ!」

「ははは、またまた。それで今回は何ですか?」

「それはな!ここの3人の中身が入れ替わってしまったのだ!」

「はい?」


入れ替わってると言われてもその3人の方を見てもその意味がよく分からず

何か3人とも持っていた。


「諸星さん。今時そういうのはバレますよ!なぁ西沢」

「本当ですよ、新城くん」

「え?お前西沢だよね」

「私達、本当に入れ替わったんです」

「は、はい?何かの冗談だよな。なぁ千秋」

「あの、本当に私の正体分からないのかな?新城くん?」

「さ、佐野さん?」

「なんで私のことが分からないのたくやくん!?私だよわたし!!!」


あああ、余計に頭が痛くなってきた…

何だかいつもとはみんな雰囲気が違うことがわかった…。


「さすがの俺もこの状況は自分だけでは解決できないと思った。

だから新城くんに何とかしてもらおうかと思ったんだ」

「お、俺にですか。つまりはみんなが入れ替わったということですよね」

「俺もさ、よーく考えたんだ。この状況をどうしたらいいかってな。

そして閃いたんだ!」

「解決策をですか!?」

「そうだ、俺は君のためにな彼女達に台本を渡したんだ。

それにはその人がどの人物になりきってもらうかについて

書いてあるんだよ!ちなみに俺も誰が誰かは分からないんだよ。

だから本人かどうかなんて知らん!」

「状況を余計に悪くしてるだけじゃないですかー!!!」

「まあ、あとは任せたよ。かつやくん!」


俺はこの突然の出来事に頭がおかしくなりそうだった。

この3人は何かが原因で中身が入れ替わった別人で

しかも諸星先輩の仕業で3人とも誰かのふりをしている。

俺の平和な日常がこの瞬間から別世界の物語になったような…。

少なくとも平凡な世界はもうこの瞬間から崩れ去っただろう。


この先俺はこの出来事を乗り越えて平和な日常を守れるのだろうか。

















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