第2話「アメリカの醜態」 2016/1010
{日本ではありませんが、アメリカも日本のやうなものですので、
Hillary Clinton と Donald Trump とのアメリカ大統領選挙も終盤戰となり、いよいよ白熱、いよいよ泥仕合となり、佳境と呼ぶにはあまりにも「唇寒し」修羅場、
アメリカの全部が(メディアもこの毒氣にすっかり冒されてしまったやうで)この痴話茶番劇の渦に卷き込まれての狂騷状態、なんと大統領選挙によって自分の醜態を世界中にさらけだしてゐるアメリカに、
この祭の後、どちらが勝ったとして(最低と最惡のいづれかが勝つことになるのだから)、アメリカはどうなってしまふのか、そのアメリカに引きづられて世界はどうなってしまふのか、おほいに懸念と危惧とを抱かざるを得ない。
ま、その分析と惻言は後日といふことにして、
以前から「トランプってあのトランプだらう?」と(狂歌制作のために)少々氣になってゐたことをこの際と思って、Trump を辭書にあたってみた。
trump 「n. 他の札を全部負かす札とした切り札(カード); 他の札よりも高く位置付けた札(カード); 偉人; 最終手段; トランペット, トランペットの音色(古語, 詩)。v. 切り札で取る; 切り札を出す(カード); しのぐ」
と私の辭書は解説した。なるほど「なんだか姓名判断になってるじゃないか」と思はれた。金髪の赤鬼のやうな外見の男に、この Trump のいふ姓もアメリカ人には無意識のうちに作用してゐるのではないかと思はれたのである。
オンラインの辭書でも「トランプの切り札、切り札の組、奥の手、最後の手段、すばらしい人、好漢」とあった。
アメリカの「奥の手、最後の手段、トランペットのやうにすばらしい人」と一般大衆は Trump といふその人に幻想を抱いてゐるのではないか。
この Trump の意味に本人が少しでも合致してゐるところがあったら、彼はラクラク樂勝してゐたであらう。アメリカを救ひだす金髪の、碧眼の、黄金製の英雄となってゐただらう。
だが、どうみても本人は Trump よりも Donald だった。どういふ意味かって?、この金髪の赤鬼をよく見て、それで直感できないなら、私の説明を聞いてもムダだ。
また、trump には隠れた意味として「捏造した」といったニュアンスもあるらしい。増々以て姓名判断だ。
trumpery となるとそれが露骨になり「見かけ倒しのもの。たわごと、ナンセンス」の意味になる。また、trumpet にも、喇叭を吹くといふ意味とともに「吹聽する、喧傳する」「自畫自贊する人、自己中心的な人、自惚れてゐる人」「放屁」まで、などあまりいいニュアンスではないらしい語感となる。
「trumpet the news」には(英辞郎によれば)「〔組織などが〕そのニュースを大々的に[得意げに・鳴り物入りで]発表する、〔メディアなどが〕そのニュースを大々的に報じる」とあるから、アメリカのメディアもどうやら トランペット氣分に冒されてしまったのであらう。
すべてはコトバのチカラタカラ、人の意識の裏か底かで作りだされる無意識の働きである。
まことにもって、生まれついてのトラブルメーカー。トリックスタアと云ってもいいキャラクタであった。
大統領選挙に敗れれば、トリックスタアの役割を終へてアメリカを活性化して姿を消す文化英雄となるだらう。歴史の女神をはじめとして、みなそのつもりであった。が、
もしも勝てばトラブルメーカーとなって、今後少なくとも四年間は世界中を攪拌して混亂させる主となる、だらう。
しかし、王樣の裸を指摘するやうに云へば、Trump は切札として誰かに使はれるもの、Trumpet は誰かによって吹かれるものであり、 ―― さうした背後関係といふか運命もすでに trump といふ語のなかに見えてゐる。
trump に味を占めて、clinton も調べてみた。が、こちらは Bill や Hillary が出てくるばかりで、clint で切ってみても男子の名(Clint Eastwood など)としか私の辭書には載ってゐない。
一つだけ、Bill の不倫騒動の時にできたのであらう「Clinton effect」「Clinton fatigue」と云ふのが見付かったくらゐであった。
そんなことより、おもしろい(Bill と Hillaryの)逸話が見付かった。
Bill と Hillary が故郷に錦を飾った時、Hillary のかつてのボウイフレンドが經營するガソリンスタンドに立ち寄った時、ビルは傍らのヒラリイに「彼と結婚してたら、こんな所のガソリンスタンド經營者の女房になってゐたんだね」と云った。彼女は(きっと侮蔑的に顏をそむけて)「もしさうだったら、彼はガソリンスタンドの店主じゃなくアメリカ大統領になってゐたわ」と(きっとツンとすまして)答へたのださうだ。
「この夫婦の會話を誰が聞いてゐたのだらう」と私などはすぐに疑ってしまふが、ともあれ、まるで、司馬遷の『史記』かなにか、中國の史書に出てくるやうなよくできた逸話じゃないか、と思った私は(侮蔑的にツンとすまして)「Hillary ってアゲマンだったんだな」と感心したが、もとよりそれは彼女の器の大きさを測り定めたうえへでの私の彼女への評價であった。
| 白きハト、羽ばたき出でぬ 奇術なら。トランプカアド、ヒラリ開けば
Word of World ∈ 思考 69 空想 ∋ Art of Heart
狂歌師が食っていける日が來ますやうに
むらさき 69 さけぶ
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