幕間

19

 協会本部を後にしたフェルディナンドは、その足でとある高級料理店へと赴いた。

 防音障壁が張られた個室のみという、密会向きの造りは、貴族や大富豪などが重宝している。

 通された一室では、ソフィとジョルジョアンナが、酒と料理が並ぶテーブルを囲んでいた。

「わりぃ、待たせたな」

「もう、遅いっすよ~!」

 フェルディナンドが向かいの席に腰掛けると、ソフィはほっぺたを膨らませる。

 すると、ジョルジョアンナが葡萄酒の瓶口を向けてくるので、杯を手に取った。

「すまねえな、婆さん……で? ソフィの方はどうだ?」

「もう経路の確保は終わってるっす。とりあえず、二十日くらいは凌げるはずっすよ」

「それは上々だな、と言いたいところだが、陸はダメになりそうだ」

「どうしてっすか?」

「やっこさん達、えらくお気に召したようでな。こりゃ、相当な数が集まるぞ」

 フェルディナンドは口元を綻ばせる。

 評議会に集まった連中が、彼の能力を目にした途端、手のひらを返す瞬間は痛快だった。

「……ということは……」

「多分、空だな」

 ソフィの視線を正面から受け、フェルディナンドが肯く。

「……随分と大がかりになってきたのう」

 それまで黙っていたジョルジョアンナが口を開く。

 その顔は、本当にこのまま先へ進んでもいいのか、という不安が微かに滲んでいる。

「どうした、婆さん? 悩みすぎると皺が増えんぞ?」

「フン、これ以上増えたところで、しわくちゃババアであることには変わらんわい」

「まぁまぁ、二人とも喧嘩なんかやめて、ここは景気づけに乾杯と洒落こむっすよ」

 宥めるソフィが杯を掲げた。

 フェルディナンドとジョルジョアンナはしばし睨み合うも、彼女に倣う。

「ヴェルバリタの未来に、乾杯っす」

 ソフィの音頭に合わせ、三人は杯を重ねた。

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