第2話「二つの血」中篇

 

 アレクとリンは城内の格納庫にいた。

 ここには何機もの魔動機が置いており、そこにはアークブレードは勿論、リンの黄緑色の魔動機ストームバレットの姿もあった。

 エレシスタ王国の主力機であるナイトや、アークブレードとストームバレットと共に格納庫の中で異彩を放つ魔動機がいた。

 その名はブレイズフェニックス。

 赤く、肩などに翼や羽の意匠があり、名前通り鳳凰や不死鳥を彷彿とさせる姿であった。


「紹介が遅れたな。俺はダリル・ターケン、このテンハイス城を任されている。謝って許されるとは思ってないが半ば強引に入隊させる事になってすまんな。よろしく頼む」


 茶髪の男が自己紹介した。身長は高く、30代程度だろうか。


「別に大丈夫です。俺が決めたことですから」

「そう言ってくれると助かる。フェールラルト卿の命でどうしてもってな……」

「フェールラルトって……」

「ああっ、リンの兄だ」

「い、今は兄の話をしなくても……」


 リンは恥ずかしそうに言う。

 どういう兄なのかは分からないが、どんなに仲の良い兄妹でも兄の話をして恥ずかしがるのも、特におかしくはないだろう。

 リンの兄、クルス・フェールラルトはエレシスタの軍を率いており、三年前のボーガリアン鎮圧での功績が認められ将軍になったという。

 リンとクルスの父、テイス・フェールラルトの功績が認められ、フェールラルト家は貴族に名を連ねた。

 まだ貴族として歴史が浅く、当主であるクルス・フェールラルトもまだ当主にしては若く、フェールラルト家を良く思わない者も多いという。


「それと、私達の他にテンハイス騎士団第五小隊に所属するもう一人紹介するわ。あれ……いない……?おーい!レーイ!」


 リンの声に応えブレイズフェニックスの腹の隔壁が開くと赤髪の少年が降り、こちらに向かってくる。

 恐らく彼がレイだろうとアレクは推測した。


「レイ・フィ・ロートスだ」


 アレクと同い年程度の少年が無愛想に自己紹介をする。


「もしかしてお前……」


 アレクは彼の耳に注目した。

 その耳は長く尖った形をしており、普通よりも少し短いがゼイオン人の耳をしていた。

 ゼイオン人を憎んでいるアレクにとって、それは見逃せない。

 ゼイオン人を間近で見るのはアレクはあまりなかったが、ゼイオン人の耳はエレシスタ人よりも長く尖っている事は常識であり、勿論アレクもその事を知っていた。


「そうだ。俺はゼイオン人とエレシスタ人のハーフだ」


 初対面でそう思われてる事に慣れているような対応でレイは答える。

 実際に初対面でレイの耳を注目される事は珍しくなく、殆どのエレシスタ人が白い目で見てきた。


「話によるとお前はゼイオン人に友人を殺されて、敵討ちでアークブレードに乗ったそうだな。ならオレも殺すか?」


 嫌らしく、アレクを挑発する。

 明確にゼイオン人を恨む人間とこれから共に戦うのはレイにとって不安でしかない。

 背中から突然斬られたりされる可能性だって否定できないからだ。


「ああ!俺はリックを殺したゼイオン人なんかと一緒に戦うのはゴメンだ!」


 アレクがレイの胸ぐらを掴む所にリンの仲裁が入る。

 これから共に戦う仲間だ。

 初対面から険悪であれば小隊長であるリンも仲裁せざるを得ない。


「はぁ、これから第五小隊はどうなるんだか……」


 ダリルはため息をつき、額に手を当てる。

 アレクをリンとレイの所属する第五小隊に編入させるように指示したのはクルスであり、ダリルはただその指示に従っただけであった。


「もう二人共!その辺にして!」


 隊長として、リンは二人を注意する。

 これが、アレクとレイの出会いであった。

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