一ノ話「出会いは突然来る」

だいぶ奥に進んだな。まだ昼のはずなのに夜並みに薄暗い。日光を遮る木のせいで地面に生えているのはほとんど雑草とコケ類の植物だけだ。


ー「とりあえずきのこはこれぐらいでいいか。あとは魔獣を探しておくか」


その時、森の奥地に肌を刺すような気配を感じた。山を登る前に感じた気配と同じだ。これは魔獣かもしれない。そう思いながら僕は奥地に進んだ。恐怖を感じる気配であるがすでに慣れている。そのおかげで一歩一歩肌を刺すような気配は増して行くにもかかわらず僕は獣道を歩き続けた。


あそこの奥は行き止まりのはず...それに魔獣以外の気配もする。


「グルルルル....!」


「だ、誰か....たすけ....」


そこには追い詰められて倒れ込んでいる少女と馬くらいの大きさの黒い犬のような魔獣が少女を襲いかかろうとしていた。


ゼロはそれを見た瞬間、一つの投げナイフを取り出し、そこに炎のような魔力を注ぎ込んでいた。


(シュッ)


ゼロが投げナイフを魔獣に当てた瞬間、魔獣は蒼炎の炎に包まれ、そのまま散っていた。


「ふう...大丈夫だった?」


僕は一息ついて少女に問いた。


「だ、大丈夫....ありがとうございます....」


「よかった....」


少女は少し深呼吸をしながら気持ちを落ち着かせていた。


「ねえ。君は誰なの?」


「僕は青龍 ゼロ。ゼロでいいよ」


「私は天津 雪乃。ここはどこ?」


「ここは山の森の奥地だよ。」


雪乃と名乗る少女はあまり状況をつかめていない。すると僕は少女の気持ちが落ち着いたところを見てこう言った。


「雪乃はどこから来たの?」


「えっと。千葉というところから来たの」


千葉?聞いたことあるけどジールにそんな地名ないな....彼女が嘘ついているように見えないし。


「どうやってここに?」


「変な扉があってそこに入ったらここに....」


変な扉、ジールにない地名から来た....僕はこの二つの情報からこう結論づけた。


ー雪乃は人間界の住人だ。


そうなればこの状況とここはどこなのかを教えないといけない。ふと空を見るとわずかに見える空が漆黒に染まっていた。


ー「もう夜か」


あの気配に集中していたから気づかなかったけどかなり時間が経っていたのか。


「状況説明は安全なところに移動してからだ。」


「そうだね。でもどうやって出るの?」


「そうだな...ここから麓まで時間かかるし....飛んだ方が早いか。」


するとゼロは悪魔のような黒い羽を4枚広げ、軽く羽ばたかせていた。


「....綺麗。」


雪乃は無意識にそう言った


「綺麗って....変わってるね。」


すると雪乃は我に戻って頰を桜色に染めてこう言った。


「あ!いや!忘れて!」


「う、うん。」


僕は空を見ながらこう言った。


「雪乃。ちょっと方を掴んで」


「え!?わ、わかった」


雪乃はゼロの肩を優しく掴み、少し恥ずかしそうにしたを向いていた。


「雪乃って人間界にあるジェットコースターは平気な方?」


「え?一応平気だけど」


「わかった。じゃあ飛ぶから掴まってて!」


「え?」


雪乃はそういう前にゼロは木々をすり抜けて満月に浮かぶ夜の大空に羽ばたいていた。


「街に行くよ」


満月の光に照らされていたゼロと雪乃の姿と雪乃の悲鳴が聞こえた。

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