第4話
──。
昼食の時間を知らせる鐘が鳴る。
「ふぅ……。」
入学式から今日までの1ヶ月はあっという間に過ぎてゆき、意外な事に僕は友達に困る事なく僕は高校生活を送っていた。
「昼食べようぜ。」
ふいに隣から声をかけられ声の主を見上げる。
僕の隣の席のやつだ。
そして僕がこのクラスに来てから2人目の友達である。まぁ1人目に関しては友達と言っていいのかわからないけど…。
「俺も食うー」
そう言って弁当箱を僕の机に置いてくるのは
僕たちは基本的に、最近流行りのスマホゲームを一緒にやったり、高校生なら誰でもやっているSNSアプリ「Twiter」の話などをして昼休みを消化している。
けれど、今日はどうやらいつもと違うらしく、 陸が にやにやと笑みを浮かべながら僕を見ていた。
「な、なんだよ気持ち悪いな……」
「奈央、お前佐倉さんと付き合ってるってまじ??」
…!?
「いやいやいや、それどこ情報。」
「いやー、御嶽が結構前から気になってたらしんだけど、お前ら入学式の時からべたべたしてるし、こないだなんて手を繋いで昇降口出てたらしいじゃん!」
「待てあれは違うんだ、うん」
がっはっは、と個性的な笑い声で笑う陸をよそに、僕は佐倉澪の方を睨む。
つい先日、確かに僕は佐倉さんの手を握った。けれどあれは向こうが面白がって繋いで来ただけで、半ば無理やりのようなものだったのだから決してそういう関係とかではない。
彼女は別の女子2人、
─
「ねぇちょっと…何か変な噂立ってるんだけど、まさか佐倉さんじゃないよね。まさかね」
放課後、さっさと帰ろうとしたところを佐倉さんが見逃すはずも無く捕まってしまい、ここ最近毎日のように自宅まで送れとの命令を受けている僕は仕方なく佐倉さんと廊下を歩いていた。(彼女が脚の怪我なんてとっくに治っているのに僕と帰っているのは、周りからの視線が面白いからだという。)
「あぁ、昼休みに話していた、黒木くんが私の手を無理やり繋いだ挙句に体育館裏まで連れてって1時間以上出てこなかったというやつね」
「ちょっと待て随分話盛ったな!?」
だいたい僕は無理やり繋がれた被害者だし体育館裏で1時間って一体何があったんですかね…。
「別に、私が流した訳では無いわ。貴方と手を繋いだなんて流したところで、何のメリットもないでしょう?」
「まぁ…そうだけど」
確かに佐倉さんからすれば僕なんかと手を繋いだと友達に言ったとしても、良い事は無いだろう。
けれど、自分で言うのもなんだが僕は上の下くらいの顔立ちだと思う。うん、気持ち悪いな。中の上くらいにしておきます。
「どうやら貴方の周りの雄猿たちはその話で盛り上がっていたみたいだけれどね。」
「雄猿って…。随分辛口ですねお嬢様…………。」
「ふふん。まぁ、所詮ほとんどの男は猿のようなものだもの。」
呆れ半分で言ったつもりだったのだがどうやら佐倉さんはお嬢様と言われるのが良かったらしく、上機嫌で歩き始めた。
「ていうか、こうやって一緒に帰ってるから噂立てられるんだよ……。」
「何言ってるの?一緒じゃないわ、私が帰ってるのを貴方が見守ってついて来ているだけなのだから、私は1人で帰ってるの。」
佐倉さんは上機嫌のまま、僕の前をつかつかとリズム良く歩いていく。
そのついて来いって言ったのは誰なんですかね。
昇降口にたどり着いたところで、彼女は大きく1歩前に出ると、黒く長い髪を揺らしながら振り向いた。
「ところで黒木くん、この後暇かしら。一緒にお勉強をしましょう。」
彼女は微笑みは周りから見れば天使のように微笑んでいたんだろうけれど、僕には悪魔のお告げにしか聞こえなかった。
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