第3話 素直な気持ち
「はぁ…」
「かつやくん今日は朝から元気ないね。どうしちゃたのかな?」
昨日は全く眠れず、朝から体が重かった。今日どう返事を返したらいいのか。
それを一晩中考えても全く分からなかった。
1人の告白ならともかく2人となると、どうすればいいのかと
考えるだけで頭が重くなる感じだ。
「ねぇ、今日は本当にどうしたの?かつやくん、昨日何かあったの?」
「なぁ、西沢。もしさ相手にどう気持ちを伝えればいいか分からない時
お前ならなんて返事をすればいいと思う?」
「そっか、相手に何かを伝えたくてもそれをどう伝えればいいか
分からないんだよね。なら本当の事を言えばいいんじゃないかな。
素直に分からないことを話してくれたら相手の人も安心すると思うよ」
「そっか、そうだよな。始めからそうすればよかったんだな。
ありがとう西沢。やっと気持ちの整理がついたよ」
「かつやくんの悩みが解決してよかったよー。あ、そろそろ学校だよ」
話してるうちに学校につき俺たちは教室に向かった。
やっぱり人に話せば気持ちも楽になるものだよな。
授業の時間、千秋と目を合う時はお互いにちょっと気まずい感じになった。
そりゃ昨日の告白が原因なのは言うまでもない。
授業も終わり、昨日の告白に対して自分の正直な気持ちを伝えるために
千秋の元へ行った。
「あのさ、千秋。今いいか?昨日のことなんだが」
「新城くん!?ご、ごめんなさい。まだ心の準備ができてなくて。
返事は明日にしてください。明日には気持ちも落ち着きますから」
「そっか、分かった。俺も正直な気持ちを伝えるからさ」
「ありがとう。じゃあ明日ね」
そういって千秋は教室から去って行った。
放課後はいつも通りに西沢の帰りを待って、下校するだけだ。
「お、新城くんじゃん」
そう呼び止めたのは佐野さんだった。
「ああ佐野さんか」
「どう?気持ちは整理できた?」
「ああ、ちゃんと答えるよ」
この時、頭の中を整理して自分の言うべき言葉を考えていた。
「あ、ごめん今人いるし、今日バイトだからまた明日ね」
「そうか、じゃあ返事は明日な」
会話を終えた後、俺は暇な時間の間、
一旦学校を出て書店で時間をつぶしていた。
こんなことがあった後だと恋愛系の本は読む気にならなかった。
恋愛必勝法とか相手の気持ちを掴むためのテクニックみたいな本を
見ると、必勝法とかテクニックとか本当に必要なものかを
ふと疑問に感じた。
西沢の部活の終わる時間のちょっと前に書店を出て
学校へ向かった。その途中で通りにいるカップルを見てると
彼らはどんな理由で相手と付き合ってて、何を思ってるのか。
なんとなく気になってしまう。だけどそれは人それぞれだから
答えはないと思う。
学校の門のところですでに西沢は待っていた。
「やっときたね。かつやくん。さあ、一緒に帰ろ」
学校の帰り道、ちょっと恥ずかしくて照れ臭いけど
西沢に昨日までの出来事を話してみることにした。
「あのな実は昨日ちょっと大変なことがあったんだ」
「何?大変な出来事って!?かつやくん何かやらかしちゃった?」
「やらかしたというのはあながち間違いじゃないな。実はさ俺、
昨日告白されたんだ」
「ええ!?告白されちゃったの?よかったじゃん。
かつやくんモッテモテだねぇ」
「2人にだ」
「え…」
流石の西沢も唖然とした表情を浮かべる。
「それは、大変でしたね。うん、ハーレムだねぇ。でも男の子からしたら
嬉しい場面じゃないの?」
「でもな、好意の子に好きっていうのは違う気がするんだ。
でも俺はそんなの初めてだったから何て言えばいいか分からなかったんだ」
「だから昨日あんなに元気なかったんだね。ごめんねからかって」
「いや、いいんだ。お前に相談したおかげでちゃんと返事するって
伝えられたんだ。だから謝る必要なんてないさ。
でも、二人とも今日は私用で返事できなかったんだけどな」
「あらら、でも大丈夫だよ。ちゃんと話せば2人とも分かってくれるよ。
それでそれで相手は誰なの?」
「千秋と佐野さんだ」
「なるほど、その二人か〜。2人とも素直な子だから大丈夫だよ。
歩ちゃんはちょっと惚れっぽいところあるけどね」
「そっか」
そうやって俺は安心して今日1日を終えられた。
そう明日からまた平凡で平和な日常が来るんだと。
そう信じていたんだ…。
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