最終話 共同作業

「わたくし、いつか小夜様との出会いをわたくし達の子供に教えてあげたいです『こんな事があったから貴方は産まれたのよ』って」

 女の子と母親が見えなくなると哀來が話し出した。

「『復讐しに行ったら自分好みの女がいた』から、って聞いたらどんな顔するんだろうな」

 あまり良い反応ではないと思うが。

「確かにあまり良い話ではありません。犠牲になった方も多いですから」

 親父、柏野さん、哀來の両親。

 今の俺達はこの人達の犠牲で成り立っている。

 一生かけても感謝しきれないだろう。

 その分哀來と、これから増えていくであろう家族を大切にしていかなければならない!

 親父、柏野さん、お義理父さん、お義理母さん。貴方達の努力と死は無駄にしません!

 まだ時間は掛かりますが約束どおり俺と哀來は結婚します!

 もう哀來をあんな悲しい目に逢わせません!

「小夜様、明日は休日です。柏野の所に行けなかった今日の分、明日は早く行きましょう」

「そうだな」

 柏野さんの取り調べはまだ続いている。

 いつかの裁判に向けて俺達も心の準備をしておかなくちゃな。

「いけない! そろそろ夕食の時間なのでつくらないと!」

「俺も手伝うよ」

「ありがとうございます!」

 キッチンの方へ行くと哀來は包丁で野菜を準備した。

「何をつくるんだ?」

「サラダです。わたくしが野菜を切りますので小夜様はお皿に入れてください」

「わかった」

 言われた通り、俺は切った野菜を皿の中に入れていった。どれも同じような量で入れていかなければいけないので難しい。

 途中から野菜を切り終わった哀來も加わり、作業のスピードが早くなった。

「できた!」

「できましたね!」

 きれいに4等分できた。

 ……そういえばこれが哀來との初めての共同作業の様な気がする。

「小夜様……いろんな事がありましたが、わたくしはこれからも」

「!?」

 哀來がいきなりキスしてきた。……さっきできなかった分か?


「これからもずっとアナタを愛し続けます!」

「俺もだ! 哀來!」

 満点の笑みでかけられた言葉に俺は迷わず返事をした。


                  ~完~


ご愛読ありがとうございました!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る