第31話 不幸な知らせ
「皆様どうですか? わたくし特製のチャーハンは」
「美味いぞ哀來」
「おいしいわ哀來ちゃん」
「哀來姉さんって料理うまいですね」
哀來はこの家に住み始めた初日から家事、料理をこなした。
お袋に比べればまだまだだが、日に日にうまくなってきている。
それを見たお袋は『ますます小夜のお嫁さんに相応しいわね』と言っていた。
それを聞いた哀來は頬を赤く染めて喜び、俺も自分の事のようにスゲェ嬉しかった。
アルトとの仲も良好だった。
お袋が演奏会などで家を空ける時にご飯をつくったり、洗濯をしたりなどしっかりと家事をこなしている。
お袋もアルトも哀來の事を気に入ってくれたみたいで良かった。
気に入られなかったらどうしよう、と思った事もあったが杞憂だったみたいだ。
「ねぇ、今テレビやっているのって……」
アルトが聞いてきたので、つけていたテレビを見てみた。
『おめでたい結婚式で恐ろしい事実が発覚しました。新婦側の父親が殺人鬼だったのです。先週、春分の日に行楽圓ドームで行われた盛大な結婚式で……』
「……」
すごく身に覚えのある事件だった。
「ど、どうしてあの結婚式がニュースになっているのですか!?」
「あんなに盛大にやった結婚式だからな。話題にならない方が逆におかしい」
「未成年なのでわたくしと小夜様の事は名前を伏せて紹介されていますね。特にわたくしが……」
「新婦だからね。仕方が無いわ」
俺とお袋が哀來をなだめているが、ショックは大きいだろう。
『殺人罪で逮捕された燕大光容疑者は株式会社燕舞の社長でしたが、デザイナーから受け取ったデザインの著作権をデザイナーから剥奪し会社のものにするなど、強引なやり方が容疑者の家宅調査で明らかになりました』
本当に最低な奴。
……ん? て事は、まさか親父も!
そうか! どうりでミュージカルを観に行った時の哀來の服装が見たことがあるように感じたんだ!
親父がデザインした服のイラストが家によく置いてあったから嫌でも目についていた。 間違いない!
「哀來姉さん。コイツに騙されていたんだよね」
アルトが哀來に聞いてきた。
「本当に自分勝手な人でした。いつかこんな日が来る、と密かに思っていました」
「哀來ちゃん辛くない? 家族でしょ?」
お袋が聞いてきた。
「大丈夫です。毎日一緒にいた訳ではなかったので『この人本当にわたくしのお父様?』と思ったくらいでしたから。」
初耳だな。しかもその予想が見事に当たっていてですごい。
「ねぇ他のチャンネルにしない? 哀來姉さんが可哀想だよ」
「そうだな」
アルトの提案に賛成し、リモコンを持ってチャンネルを変えようとした。
『速報です。先ほどお伝えしました、燕大光狙撃事件の犯人が逮捕されました』
「何!?」
これは聞き逃せないぞ! 一体誰だ!
『逮捕されたのは柏野元道(もとみち)。燕容疑者の姪の執事をしていた男です』
「嘘だろ!」
「そんなっ!」
柏野さんがやったっていうのかよ!
嘘に決まって……。
『逮捕された柏野容疑者は容疑を認めているとのことです』
容疑を認めている!?
こんなのアリかよ!
……そういえば柏野さん『復讐したい』って言っていたからな。
でもそれは狙撃事件の後だ。だったらもう復讐は済ませているはずだ。
「小夜様……柏野が、柏野があああああぁぁぁぁぁぁ!」
哀來はとうとう泣いてしまった。
大光より親しかった人だったからな。俺も復讐生活の中で唯一の味方だったから気持ちはわかる。
「……哀來。しばらくしたら柏野さんに会いに行かないか?」
「……はい。会って話をしたいです」
「じゃあ行こう。留置所にさ」
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