第25話 2つの準備
あの狙撃事件から一週間が過ぎた。
二月も下旬に入り、高校の卒業式の予行練習日も近くなってきた。
だが俺と哀來はそれよりも後にやる行事の準備している。
「会場は
「楽しみですね針斗様」
哀來と綾峰さんは哀來の部屋で仲良くウエディング雑誌を見ていた。
「あの~綾峰さん。私に何か用事があったのでは?」
「ああ、忘れてた」
『忘れてた』だぁ?
呼び出しといてそれはないだろ!
「先生には会場でピアノを弾いてもらう約束をしましたね。その曲を決めるのは先生に任せてもいいですか?」
「いいですよ」
「ピアノの位置は担当者達に決めるから任せておいてよ。そうそう、奥の席に座っている人にも聞えるようにピアノの中にマイクを入れておくから」
「わかりました」
準備は全部担当任せか。
「小夜様のすばらしい演奏を沢山の招待客の皆様にお聞かせできるなんて! 自分の事みたいでとても嬉しいです!」
「そ、そうですか」
そう思ってくれて嬉しいぞ。
……あれ? 何で嬉しいんだ俺?
「僕と哀來ちゃんの愛をイメージしたような曲がいいな。それとも結婚を喜ぶ曲でもいいなぁ」
「あ! いい事思いつきました!」
哀來が提案するとは少し意外だ。
「先生と見たミュージカルの曲がいいです」
「ああ、あれですか」
「どんな曲なんだい?」
綾峰さんが哀來に聞いてきた。
「主人公の夢が叶った気持ちを歌にした曲です」
「なるほど。先生、それにしてくれ」
「わかりました」
「話は以上だ。また何かあったら呼ぶから」
「小夜様よろしくお願いします」
「わかりました」
俺は哀來の部屋を出て、真っ先に柏野さんがいる応接室に向かった。
作戦会議をするためだ。二人だけだけど。
応接室に入ると柏野さんはソファに座って待っていた。
「お待たせしてすみません」
「お気になさらないでください。どうぞお座りください」
ソファに座り、柏野さんにさっきの話し合いの事を伝えた。
「なるほど。では小夜様も式に参加なさると」
「はい」
「……これは私からのお願いですが復讐は結婚式でやりませんか?」
「結婚式で、ですか?」
「哀來様を連れて逃げて下さい」
「はい!?」
連れて逃げる!?
「『連れて』って、会場はドームですよ! 走って逃げたら必ず捕まりますよ!」
「大丈夫です。走って逃げなければいいのですから」
「……どういう意味ですか?」
「こんな作戦はどうでしょう」
俺は柏野さんのアイディアを真剣に聞いた。
「えっと、なんというか……成功しますかね?」
「実は昨日、お嬢様にもお伝えしました」
「そうなんですか!?」
「はい。『一緒に逃げる』とは伝えておりませんが」
「練習はいつからします?」
「明日からしましょう。大掛かりですから」
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