第24話 真実
「妻となる婚約者が不安な夜を過ごすんだ。一緒にいて当然だろ」
「綾峰様! お嬢様は私がお守りいたしますから今日はお帰りになられた方がよろしいかと」
「哀來ちゃんは僕と結婚するって言ったんだ。だったら僕と一緒にいたほうがいいだろ!」
「何と!」
哀來の心変わりには柏野さんもかなり驚いた。
そんな柏野さんを置いて綾峰さんはドアを開けて走って出て行った。哀來の部屋へ行ったのだろう。
「ど、どういう事ですか!? 小夜様!」
ついに柏野さんまで俺の事を『小夜様』と呼んだ。
「哀來さんは俺を諦めて綾峰さんと結婚すると言いました」
「なんて事を! もしかして今でもお嬢様の事が好きではないのですか?」
なんて質問をしてくるんだ。
どう答えればいいんだ?
ピピピピピピピピピピピピピ
持っていたスマホが鳴り出した。
「すみません」
「いえ、おかまいなく」
スマホを手に取ると架谷崎さんからの電話だった。
「もしもし?」
『もしもし小夜君、ちょっといいかな?』
「はい。何でしょう?」
『昼に私が言った『柏野さん』なんだけどね、その人ってもしかして燕家に仕えている執事さんの事?』
「そ、そうですけど?」
何で知っているんだ?
『やっぱり! お母さんから燕家にいる、って聞いたんだ。それで知らせたい事があるの。』
な、何なんだ?
『実はね、先生が殺された日に訪れたお客さんはね『柏野さん』だったの』
「何だって!!」
さすがに叫んでしまった。
『黙っていてごめんなさい。まさか知っているとは思わなくて』
そうか。架谷崎さんは俺が燕家にいるのを知らない。
だから柏野さんの名前を聞いたときに様子がおかしくなったんだ。
「……わかりました。わざわざありがとうございました」
いろいろ納得できない気持ちで電話を切った。
あの日事務所に行ったのは柏野さん?
という事は……。
「犯人は柏野さん!?」
「なんですかいきなり!」
思わず柏野さんの方を振り向いて叫んだ。
「か、柏野さん! 事件があった日に……親父の事務所に行ったんですか!?」
柏野さんは黙って俯いた。
「何とか言ってください! 柏野さんが親父を殺したんですか!?」
「……申し訳ありません!」
柏野さんは俺に土下座をしてきた。
「……どういう事ですか?」
俺は恐る恐る聞いた。
「確かに私はあの日、朱雀様の事務所にお邪魔しました。朱雀様と大切なお話をするために」
「何ですか、大切な話って?」
「お嬢様と小夜様を婚約させるお話です」
そっか、十八年前の約束。
「それについて朱雀様と一時間ほどお話ししました」
「帰るときには親父はどうなっていたんですか?」
「生きておりました」
「え!? だってその日に来たお客さんは一人だって聞きましたよ!」
どういう事だ?
「ええ、なので私は考えました。そして一つの考えに辿り着きました」
どういう考えだ?
「事件の日に訪れたお客様は私一人でしたね」
だったら柏野さんが犯人じゃ……。
「同じ日に、私になりすました別人が来たのではないかと」
「な、何だって!!」
別人? なりすました?
「ど、どうしてそんな考えになるんですか!?」
「私も警察の事情徴収に呼ばれ、その時に朱雀様の死亡推定時刻を聞きました。その時間は私が事務所を出た時刻から一時間も過ぎていました」
「い、一時間も……」
だったら柏野さんにはアリバイがある。
「監視カメラにも映っており私を犯人として告発するには不十分だったため開放されました。しかし犯人は見つかっておりません」
「どうして犯人は柏野さんに変装なんかして会いに行ったんでしょうね?」
「朱雀様を油断させるためでしょう。そして……私はとんでもない事にも気が付きました」
今度は何だ?
「私が朱雀様に会いに行った事を知っているのは大光様だけなのです」
「……それって、つまり……」
「はい……」
やっぱり。
親父を殺したのは。
燕大光!!
「私が出かけた後に大光様は『朱雀にあったな』私に聞いてきたのです。誰にも知らせていない事をどうして知っていたのか今まで疑問に思っていましたが……まさか……」
「許さねぇ……絶対に……」
なんとかしてアイツに復讐したい!!
「復讐、したいですか?」
「!!」
柏野さんが立ち上がり、俺の心を読み取ったかのように聞いてきた。
「はい」
俺は迷いなく答えた。
「私も復讐したいです。朱雀様と彩彦様の命を奪った男に」
柏野さんは前に見た時よりも強い怒りがこもった目つきをしていた。
「柏野さん……やりましょう!」
「はい! プランは私が考えます。法に触れずにできる復讐をしましょう」
そうだな、触れたら大光と同じだ。
「法に触れずにやる……難しそうですね」
「大丈夫です。小夜様には安心して復讐できるように綿密に計画します」
「ありがとうございます」
絶対に成功させる。どんな復讐でも!
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