第4話 鬼の里 part2
僕は何時もあのお屋敷の中以外には行ってはダメと言われてた。
何十年も何百年もあの家で暮らしてきた。
いつも勉強勉強。
『あなたはここの当主様なのです。身の弁えぐらい出来ないと一族の恥ですわ!』
とよく言われて、色んな要らない知識を植え付けさせられた。
歴史、丁寧語、身支度、力の制御、計算術、国語力、話術、交渉術、料理術など、色々な物を覚えさせられた。
毎日が退屈だった。
そんなある日、酒呑童子と言う者が僕にこんなことを言い出した。
『ん?お主か?青叉は?・・・・ほう。良し、儂は今週中に里を出て、酒巡りの旅に出るのじゃ。・・・そこで、お主にも来てほしいのじゃが・・・拒否権はないぞ?』
僕はその時嬉々とした喜びになった。
やっと、外に出られる・・・何の
と思った。
だけど、外に出たら外の規則に従わないといけない。そんな気持ちに苛まれていた。
それから一週間が経った。
青叉「・・・じゃぁ、行ってきます。」
??「外の世界のことをちゃんと見て学びなさいよ?・・・いってらっしゃい。」
??「いってらっしゃいませ。青叉様。」
僕は酒呑童子が来いと言われていた場所に行ってみた。
最初は家以外の場所が初めてだったから少し迷ってしまったけど、何とか集合場所に着いた。
酒呑童子「お?来たか。・・・これで希望者は全員かえ?」
六童子「ああ、そうだ。」
酒呑童子「そうか・・・。」
六童子の言葉に酒呑童子は頷き、キャンプファイヤーの上に立った。
酒呑童子「今宵は良く集まってくれた!儂は嬉しいとも思う!今から里の外に出て酒巡りの旅に行くのは事前に知らせたから分かっておると思うが、決して!悪事をしに行くのではないからな!それだけは覚えておけ!では、皆の者。旅の紋章を付けよ!」
「「「「おおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおお!」」」」
酒呑童子の言葉に僕は終始感動していた。
僕も含めてみんな、酒呑童子の言葉を聞き、それに応える。
今この場に集まったみんなは分かれる親や親友、家族にお礼の言葉やフラグを建てている者も居た。
酒呑童子「・・・ん?お主は家族に何か言って来んのか?」
青叉「うん。僕はまだ子供だから。それに、今帰ってお礼を言っても、追い出されるだけだからね。」
酒呑童子「・・・・そうか。お主にはお主自身の力があるのじゃ。それを信じて今のこの光景を忘れないよう、覚えておき。外に出たらもう、会えない奴なんているだろうからね。」
青叉「・・・うん。」
酒呑童子の言葉に僕は頷いた。
それから数分後。
酒呑童子「それじゃぁ、皆の者!酒巡りの旅に、いざ行こうぞ!」
「「「「応!」」」」
その一言。たったその一言で今この場にいる皆は心を1つにした気がした。
それから酒巡りの旅は5年続き、時々妖怪も参加することがあり楽しかった。
そんなある日、源頼光とその弟子と他の者によって旅は終焉を向けた。
生き残っている鬼達の殆どが鬼の里に帰還した。
帰還しなかった者は、
1人、封印された酒呑童子。
2人、茨木童子。
3人、4人目の四天王
他何鬼か、源頼光の家に。
そして、家に帰って来た。
??「あ、青叉様、お帰りなさいませ。体調の方は大丈夫ですか?」
青叉「うん、何とか。それより、両親は?」
??「・・・・・・・非常に申し上げづらいのですが。」
青叉「・・・どうしたの?」
??「・・・よし!・・・それで、あの方達なのですが・・・。謎の病気で2人とも死にました。」
青叉「え・・・?」
??「すみません。今話すべきではありませんでしたね。一度部屋に戻って食事をしてからお話をしましょう。」
そう言って僕を部屋まで連れてきて、戻ってしまった。
それから数分後
??「青叉様、お食事を用意しました。」
青叉「・・・うん。入ってきていいよ。」
??「失礼します。」
僕は持って来てくれた食事を食べた。
??「今日は青叉様が好きだった物をご用意しました。・・・それでは、食べ終わったらお呼びください。失礼します。」
青叉「あ、ちょっと待って。」
??「?おや、もう食べ終わってしまったのですか?」
青叉「・・・うん。前にちょっとしたことがあって中々口に入らなかったから結構お腹空かせていたから食べ終わっちゃった。えへへ。」
??「そうですか。では、片付けてまいりますね。」
青叉「うん。・・・あ、片付けたら戻って来てね?・・・親の、話を聞きたいから。」
??「・・・はい。承知しました。」
そうして、料理が無くなった皿を食堂に持って行った。
それから10分が経った頃
??「・・・青叉様、中に居ますか?」
青叉「うん。入って来てもいいよ。」
??「失礼します。・・・・それで、両親のお話ですが。」
青叉「・・・うん。聞かせて。僕も大人にならないと行けないから。」
??「・・・分かりました。改めて申し上げます。両親は青叉様が居なくなってから2年後に今まで発症したことのない病気で3か月苦しみながら・・・亡くなりました。」
青叉「・・・そう、なんだ。」
僕は5年両親と離れて居て、両親の暖かさを求めてまた戻って来たのに、もうそれは無くなっていた。
??「・・・・それで、青叉様の両親が遺言を残しておりますが、如何なさいましょう?」
青叉「・・・・・聞かせて。」
??「・・はい。畏まりました。」
拝啓 私達の娘へ
私達は貴女が居なくなって2年。貴女を育ててきた過去を一度、振り返って見ました。
過去の私達は貴女が多くの物を覚えていく様を見ていました。
この子は天才だ。それを言われた時は嬉しかった。
この子は何でもできる。何でも覚えていく。・・・でも、それは私達の思い込みでした。
貴女は昔の様に甘えてくるのを私達は嬉しかった。でも、その思い込みの所為で
貴女に強く当たり過ぎていた。
私達は貴女の親として、失格ね。
だから、死んだ後だけど、ごめんなさい。これだけは言わせてください。
そして、ありがとう。私達の子供として生まれてきてくれて。
ありがとう。貴女は私達の唯一の宝物。
そして、ごめんなさい。貴女を置いて、私達が先に逝くことに。
でもね。貴女は旅をして、楽しかったでしょう?辛かったでしょう?
貴女は何時でも旅に出ていいのよ。
そして、ここは貴女が帰ってくる場所。いつも変わらぬ場所。
貴女の帰りを待つ者、貴方の笑顔を見て、元気が出る者。
それぞれがここに居る。貴女はこの場所に帰って来て、変わらぬ日常を送るため。
私達はここを守ります。ここは貴女の唯一の居場所なのだから。
そんな私達から、貴女に贈り物を送ります。それで、貴女の身と貴女が想う人。
そして、この里を守りなさい。
敬具 貴女を見ている両親から。
青叉「う・・・うぅ・・・あ”あ”あ”あ”あ”あ”ぁ"ぁ”ぁ”ぁ”・・・」
僕は泣いた。今まで誰に対しても抱かなかった、悲しみの感情が滝の様に流れてきた。
僕は4分ぐらい泣いた気がする。
僕が泣き終わったのを傍で、ずっと待っていてくれた。
その腕には紫色の布があった
??「・・・・これが、両親から預かった物です。」
紫色の布に包まれていたそれは
青叉「・・・これは・・・ペンダント?」
それは特殊な黒色の紐に鍵の様な物がぶら下がっていた。
??「それは、一族に代々伝わる第5層から地下に行くための鍵です。」
青叉「・・・これで、里や僕を?」
??「その鍵の力は分かりませんが、第5層の逸話は聞いたことあります。
昔に人族によって倒されて封印された鬼、だそうです。」
青叉「・・・人族によって封印された・・・鬼。」
僕は少し興味はあったけど、行く勇気がなかったから今だに行ったことがない。
・・・僕の過去の話はここまで。
現実に戻ろう。
僕は過去に振り返る時はいつもこの丘の木の下で里を眺めている。
いつもここで決心をしたら戻ることにしていた。
僕「・・・あ、ここに居たんだ。」
青叉「!」
僕は驚いた。ここまで来るのに結構の距離あると思ったんだが・・・それほど僕は過去に浸っていたのか。
そして、僕が考えているうちにすでに横に並んで里を見ていた。
僕「・・・僕の名前、言ってなかったね。僕は鬼神颯澪。よろしくね?」
鬼神颯澪・・・鬼神一族。
僕「・・・ここから見える里、綺麗だね。いつもここに来て、見てるの?」
青叉「あ、ああ。いつもここで守るための里を見ている。それと、僕のことは
青叉と呼んでくれ。」
僕「へぇ~。ねぇねぇ、青叉?」
青叉「ん?何だ?」
僕「・・・守る目的ってみんな同じなのかな?」
青叉「・・・え?」
僕は颯澪から出た言葉に戸惑った。
僕「・・・僕ね。ここに来たときにね、思ったんだ。人でも鬼でも迷うことはあるし、守りたいものがある。だけど僕は守られていてばかり。僕は・・・。」
颯澪は続きを言わなかった。
否、言えなかったのだ。自分が何なのか。誰にも分からないから。
僕「・・・青叉の守りたい物って何?」
颯澪は純粋な質問をしたようだが、僕にとってはまるで重みがあるような質問だった。
青叉「・・・僕の守りたい物はこの里と僕自身。そして、家。これだけ。僕はこれだけしか守ることができない。」
僕「・・・そうなんだ。じゃぁ、それをあの人にも言えば良いんじゃない?」
青叉「言ったさ。でも、無理だった。あいつ等は儂のことをまだ子供扱いしてるからな。」
僕「・・・ならさ。僕はここに来るまで考えたんだよね。何をすれば、青叉とあの人達の仲が良くなることを。」
青叉「・・・どんなこと?」
僕「それはね、ゴニョゴニョ。」
青叉「・・・なるほど。それは良いね。」
僕「・・・このことは沙希に言わないでね?僕は戦える力は無いから。」
青叉「了解。君の頼みなら聞いてあげる。それとさ、もし、それが終わった後さ。
・・・君の後について行っていい?」
僕「・・・ん?最後に何か言った?」
青叉「ううん!なんでもないよ?何でも。」
僕「ん?」
青叉「そ、そんなこと良いから、早く行こ?ね?」
僕「う、うん。分かったから、ちょっと、あまり、引っ張らないで。」
青叉は顔を赤くして僕に何か言っていた様だけど、小さくて僕には何を言っているか聞こえなかった。
続く
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