09 キルト村

 キルト村の朝はとても早い。それは村人の多くがそれぞれ自分たちの仕事の他に村の治安を守る自警団としての側面を持ち、その訓練に時間を割く必要があるためだ。

 治安を悪化させる者は村人ではない。外部から侵入する魔物や野盗たちがそうだ。村の北西から南西にかけて迷いの森という大森林が広がっているため、そこから出てきた魔物が村を襲ったりするのだ。

 村を守るための冒険者を雇い続ける金などないが、しかし属しているデスティネ王国の景気が良いため納税の負担は大きくなく、毎日の食事にはあまり困らない。つまり時間的な余裕も多少ならばあるということで、それならば自分たちで自警団を結成しようではないか、という結論に至ったのである。始まりはずっと昔のことだがそのしきたりは現代まで受け継がれており、景気の波に影響を受けることはあっても、廃止されるなどということはなかった。

 そのため、はっきり言ってこの村の戦闘力はかなりのものだ。戦争のプロである軍人や対魔物戦闘のプロである冒険者たちと比べるのはさすがにおこがましいが、それでも一つの小村のものとしては圧倒的だろう。実際に冒険者試験をパスしてしまう村人だって過去にはいたし、自分だっていつかは、と思う若者だって多いはずだ。

 そんなキルト村に住む十二歳の少女――シルヴィアにとってもそれは例外ではない。

 この村の子供が戦闘の訓練を開始する時、男なら剣か槍を、女なら弓を選択して戦士としての人生を歩み始める者が多いが、シルヴィアはその限りではなく、武器選択の際には剣を選んでいた。その光景を見ていた大人たちは全員が微笑まし気な表情を浮かべていたのを覚えている。きっとシルヴィアの真意を正しく読み取ったのだろう。――ああ、ラナーシャに憧れているんだな、と。


「ラナーシャ・セルシスか……」


 早朝訓練のために日が昇らぬ時間に家を出たシルヴィアは、訓練用の木剣を手に取り静かに呟いた。

 ラナーシャ・セルシス。その名前はこの村の人間にとっては特別なものだ。シルヴィアが産まれる一年前に村を出たため面識こそないが、彼女のことは多くの人から聞かされていた。

 かつては泣き虫で甘えん坊の少女だったこと。だがひとたび剣を手にするととてつもない速度で成長し、たった一年ほどで、この村の出身者で初めてのスキルレベル5を手にしたこと。そして、ある日、誰にも何も告げずに村を去って行ったことなど。

 シルヴィアはそんなことを思い出しながら、木剣を持って広場へと出た。


「おはようシルヴィア」

「うん、おはようメルト」


 広場でシルヴィアを出迎えたのは、メルト・モノレリィという十四歳の少年だ。彼とは家が隣同士であり、歳は二つ違いだが村で一番の仲良しだった。毎日の早朝訓練だって共にこなしている。――そして、プロの冒険者を夢見る同志でもある。


「今日はいつもより早起きなんだね」


 そう問いかけたのはシルヴィアだ。

 メルトの黒く短い前髪は汗で額へとくっ付いており、すでに三十分以上は剣を振り続けているのが予想できた。


「まあな。今日はちょっと気分が冴えててさ」

「そうなんだ? 確かにいつもは冴えない顔してるもんね」

「いや余計なお世話だわ」


 おどけてみせると、彼は素早くツッコんで共に笑ってくれる。二人は互いに気を使う必要のない、気楽な関係なのだ。

 そのまま少しの軽口を叩き合いながら、二人はいつもように剣を構えて向かい合う。

 これから始まるのは、毎日休まずに行っている一対一での模擬試合だ。先ほどまでヘラヘラとしていた両者の表情にも小さな緊張が見て取れる。やがて訪れた沈黙はシルヴィアが剣を振りかぶることによって破られた。

 上段からの振り下ろしを、剣で防がれる前に足払いの軌道へと変える。メルトはそれを足を引くことによって回避すると、上体を前へと突っ込ませシルヴィアの肩口へと突きを放つ。

 だが、シルヴィアはその攻撃を読んでいた。メルトの下半身へと振るった剣をそのままの軌道で引き戻すと、突いてきた剣を身体の範囲外へと受け流し、更に一歩を踏み出す。


「――よしっ!」


 そしてシルヴィアは、メルトの股間へと膝蹴りを放ち、命中する寸前で身体を停止させた。


「……また負けたよ」

「やーいまた勝った!」


 決着は一瞬で着いた。

 シルヴィアが剣を振るってそれをメルトが避けると同時に突きを放ち、今度はシルヴィアがそれを受け流した。止めの一撃を入れるまでの行程はたったこれだけだ。そしてこの模擬試合は一撃でも攻撃が入ると決着とするルールなため、止めの攻撃が本当に止めに成り得るのかどうかは考慮しない。

 嬉しそうにはしゃぐシルヴィアに対し、メルトは悔しさから空を仰ぎ見た。


「あーあ、やっぱ俺って才能ないのかなぁ。……お前が凄いのか、俺が凄くないのか、いったいどっちだ? いや、それともまさか両方?」

「さあ……?」


 その答えを二人は持たない。

 十二歳にして十四歳の人間に剣術の模擬試合で勝ち越しているのだから、シルヴィアには才能があると言えるのかもしれない。だがそれは、メルトが本気で剣を振っていないからだ。

 毎日行う模擬試合で怪我をするわけにもいかないため、動きの形や相手の攻撃への対処を学び訓練するだけに止め、二人ともが全力で剣を振るうことはない。そんなルールを設けず両者が全力で打ち込み合ったら、年上で男でもあるメルトが大きく勝ち越すのは間違いないだろう。

 そのことから、一見天才に思えるシルヴィアも、決して天才などとは言えないのだ。

 本当の天才――それは、性別や年齢に関係なく、鬼神の如き剣技を可能とする者だ。外の世界ではそのような者がたまに現れると聞くし、かのラナーシャもその類――それもかなり上位――の人間だ。


「でも、こうやって毎日頑張っていれば、いつかはカッコいい冒険者になれるよな」

「うん、そうだよ! 天才じゃなくてもプロの世界で活躍する人はたくさんいるもん!」


 最終的にはいつも通りの結論に落ち着き、二人はもう一度剣を構えて向かい合った。

 その後も何度か木剣での模擬試合を行い、二人で揃ってあらかじめ設定しておいた回数分の素振りを行うと、すぐに早朝訓練の終了時間が訪れる。その後は朝食を済ませ、それぞれ家の仕事を手伝わなければならない。

 この日もいつも通り、広場の隣に建つモノレリィ家の影が二人の足下から身を引いたタイミングで訓練を打ち切った。二人は少しの休憩を挟んでから、やがて手を振り合いお互いの家へと帰る。そんな時だった。


「あれ、誰だろあの人たち」

「んー?」


 シルヴィアが見たのは、木柵で囲まれた入り口のアーチ越しに、こちらへと歩いて来る三人組の姿だった。

 遠くてはっきりとは見えないが、男が二人、女が一人という内約なのは理解できた。彼らは旅装束のマントを羽織っており、ゆっくりと、だが確かにこの村へと近付いてきている。


「一人馬車に乗ってるし……貴族様……はこんな所来ないよね。じゃあ商人?」

「ばか。商人だって来ないよ、こんな辺境の村になんか」

「じゃあ……誰?」

「さあ? まあ、野盗とかではないだろうな。三人しかいないんだし」


「ちょっと村長に知らせて来るから待ってろ」と言って村の奥へと駆けて行ったメルトの背中を見送りながら、シルヴィアは久しぶりの客人に胸を躍らせている自分に気が付いた。

 そうだ。彼らが誰であろうと、こんな辺境の村までやって来たということは長旅なのは間違いない。ということは本物の冒険者だって引き連れているのではないか。キルト村の若者にとっては憧れの存在であるプロの冒険者に実際に会えるかもしれない。一旦そう思うと、最早十二歳の少女が好奇心に打ち勝つことなど不可能だった。

 シルヴィアはメルトが戻ってくるのを待つことなく、彼らの下へと駆け寄って行った。




 ◆◇




 一カ月近い長旅の末に無事キルト村へと辿り着いた時、ラナーシャはこちらへと駆け寄って来る少女の存在に気が付いた。アルシェやグレイよりもずっと幼い、赤髪の少女だ。

 ラナーシャが久しぶりの故郷を懐かしむ前に三人の前へと現れた少女は、頬を流れ落ちた汗を拭いながら、キラキラと輝く眼差しを投げかけてきた。


「あの、あの、冒険者の方ですか?」


 そう問いかける声色もまた、眼差しと同じくどこかキラキラと輝く雰囲気を纏っていた。

 ――相変わらず、村人の冒険者に対する羨望は大きいんだな。

 少女の様子にふとそんなことを思い、自分にはわからない感覚だったなと、懐かしい気分になる。それには、自分たちもまた戦士だから戦闘のプロに憧れるのだ、という理由の他に、このような閉塞的な村で日々の生活を送っている為に“冒険する者”という名前そのものに対する憧れが存在するのだと推測できる。――やはりこれも、かつてのラナーシャには理解できなかった感覚だが。


「ああ、冒険者だ」

「うわぁー、女性の冒険者、初めて見ました……」


 少女はラナーシャの返答を聞くと、まるで神に祈りを捧げるかのように、両手を胸の前で握りしめた。純粋無垢なその可愛らしさに思わず緊張していた頬が緩む。

 少女はそのまま、今度はアルシェの方を向いた。


「あの、あなたも冒険者ですか?」

「うん、そうだよ。よろしくね」

「はわぁー。カッコいい……」

「あはは、ありがとう」


 これまでの旅でキルト村がどういう所なのかは説明してあるため、冒険者への羨望というこの村の特色を把握しているアルシェは、大袈裟に感激する少女の様子に訝しむことなく応えている。

 やがて最後に少女が向いたのはグレイの方だ。


「もしかして、あなたも……?」

「まあな」

「凄い……三人ともが冒険者だなんて、この村に何か用事があって来たんですか?」

「まあな」

「あの、どうしてこんなところまで来たんですか?」

「まあな」

「……どうかされました?」

「まあな」

「……凄いや、全く自分を偽ろうとしない。初対面なのに傍若無人なのがよくわかる……」

「まあな」

「――すまない、ちょっと人に会いに来たんだが、通してもらえるか?」


 適当にあしらうグレイに何故か感激している少女へと、ラナーシャが旅の目的を告げた。

 それを聞き、もう一度ラナーシャへと羨望の眼差しが突き刺さる。


「はい、もちろんです! さっき私の友達が村長を呼びに行ったので、ちょっと待っててくださいね!」

「ああ、わかった。ありがとう」

「いえいえ!」


 小躍りでもしそうな少女の言葉通り、やがて一人の少年に引き連れられて四十歳ほどの男性が姿を現した。

 男はラナーシャの姿を見て驚愕に目を見開くと、少年と少女に「少しあっちへ行ってなさい」と告げ、一人でこちらへと向き直った。

 ラナーシャはそんな彼に対し、静かに頭を下げた。


「お久しぶりです、カインさん」

「ああ……驚いたよ……」


 カインと呼ばれた男は、心底信じられないといった表情でラナーシャの顔を観察する。やがて見間違いではないと判断したのか、少しずつその表情を柔和なものへと変えていった。


「あの女の子が、まあ立派になったもんだ……」

「外ではそれなりの経験を積みましたから、嫌でも成長してしまいました」

「ははっ、こんな村でも、ラナーシャちゃんの噂は聞くよ。本当に大したもんだ」


 そう言うカインの目尻に光るものが溜まっていく。

 ラナーシャも、村を出てからは一度もされたことのない『ラナーシャちゃん』という呼び方に懐かしさを覚え、込み上げてくるものがあった。

 そんな感情を隠すかのように、ラナーシャは口を開く。


「あの、それで……村長は?」

「今は私が村長だよ。親父は九年前に亡くなった」

「そうだったんですね……」

「ああ、だがしんみりとした話はなしだ」


 カインはそう続けると、ラナーシャの下へと歩み寄り肩に手を乗せた。


「ほら、ご両親に会いに来たんだろ? 行ってあげなさい。二人とも元気だ」


 そんな言葉に、ラナーシャの心臓が大きく高鳴った。

 両親は無事――ずっと気になっていたが、ずっと会うのを避けてきた二人が、今でも元気に生きていると言う。今回の旅で最も大きかった心配事が解決し、安堵の念に両膝から崩れ落ちそうになる。

 なんとか耐えたラナーシャは、「ありがとうございます」と言い頷いた。


「気にしなくていい。さあ行きなさい」


 そしてカインはアルシェとグレイへと向き直った。


「ラナーシャちゃんのご友人の方たちですね? 私がキルト村村長のカイン・ゼハードです。……大変申し訳ありませんが、少しだけ彼女を一人にさせてあげてください。お二方はどうぞ、私の方で歓迎させていただきますので」

「ご丁寧にありがとうございます。ではお言葉に甘えて、少しだけ休憩を取らせてください。長旅で疲れてまして……」

「はい、どうぞこちらへ。ご案内いたします」


 そんなやり取りがラナーシャの背後で繰り広げられる。

 やがてアルシェやグレイとは別行動となったラナーシャは、迷うことなく自らが生まれ育った家へと向かった。

 村を出てからの十三年間で少しばかり辺りの景観は変わってしまったが、それでも道に迷ったりなんてことはあり得ない。村の入り口から少し奥へと入り、何もない広場を横切れば、そこにセルシス家は存在する。

 やがて懐かしの実家前へと辿り着いたラナーシャは、玄関扉の前で大きく深呼吸をした。

 両親はどんな姿をしているだろう。成長した自分を見た時、どんな反応をするだろう。そして、かつての優しかった両親の面影はあるだろうか。

 様々な感情がラナーシャの心中で吹き荒れる。

 “剣の女神に愛されし者”が自分ではないと知り、ようやく自らの気持ちに整理が付き、こうして両親へと会いに来た。言いたいことだってある。それはもちろん、剣の女神様が愛しているのは私ではなかったんだよ、ということ。

 あまりの緊張から少し息切れする。

 やがてそれらから強い意志の力で目を逸らすと、ラナーシャは眼前の扉をノックした。少しの間が空き、内側から開かれる。

 鼻腔に広がる、懐かしい木の香り。物心付いた頃からずっとある蘇芳すおう色の小さな絨毯。そして――。


「……ラナー?」


 内側から扉を開けた母親の、少し老いた顔。

 かつて大好きだった、そして大嫌いになった母親――レイナ・セルシスの不思議そうな表情がそこにはあった。少し白髪が混じった茶髪からは年齢を感じさせるが、それでも整った顔立ちは以前のままだ。

 やがてレイナはしっかりとラナーシャのことを認識したのか、左手に持っていた木桶を床へと落とした。


「ラナー? あなたなの!?」

「……お母さん」


 お母さん、そう呟いた瞬間、ずっと我慢していた涙がラナーシャの右頬を伝った。

 未だ信じられないといった表情のレイナは、それでもゆっくりとラナーシャの手を取ると、静かに自らの胸元へと引き寄せていく。

 やがて、彼女はしっかりと娘の身体を抱き締めた。


「ラナー。ごめんね。ずっと謝りたかった。もう会えないと思ってた」

「……うん、ごめん。勝手に出て行ったりして……」

「どうしてあなたが謝るのよ。私たちが悪かったの。本当にどうかしてたわ。こんなに可愛い娘にあんなに酷いことをした。二人ともずっと、ずっと後悔してたわ」


 そう言いながらより一層強く抱き締めてくれる母親に、ラナーシャの胸に温かいものが流れ込んで来た。

 ずっとトラウマだった母親の匂いが、とても優しい穏やかなものに感じられる。その匂いにもっと包まれたくなったラナーシャは、レイナの背中へと恐る恐る手を回した。


「……大好きよ。ずっとラナーのことを愛してるわ」

「……うん」


 ずっと言おうと思ってた、剣の女神に愛されし者が自分ではないという言葉。――それは、もうすっかりとラナーシャの頭から抜け落ちていた。そんな言葉がなくとも、母親は以前の優しい彼女へと戻っているのだ。

 少しの間そうして抱き合っていた二人は、やがてどちらともなく身体を離した。

 涙を浮かべた顔で微笑んでくれる母親へと、ラナーシャも同じように涙を浮かべながら微笑み返す。――そんな時だった。


「――おーい、桶はどうしたんだー?」


 そんな間延びした声が、ラナーシャの背後からレイナへとかけられた。


「おっと、お客さんか。……ん? ってか誰だ?」


 そんな聞き覚えのある懐かしい声に、ラナーシャは背後を振り返った。

 ラナーシャにも引き継がれた赤い髪には一見して白髪はないようだが、やはり顔は少し老けている。右手には農具を持っており、こんな朝早くから仕事をしていたのだろうと推測できた。そんな父親――シグレ・セルシスは、ラナーシャの顔を見ると、先ほどのレイナと同じ表情を浮かべた。

 やがて片手で目を覆うと、表情を隠すかのように天を仰いだ。


「……そうか。そうかぁ。帰って来てくれたのか」

「うん……ただいま」


 ふと、シグレの目元を覆っている手の隙間から涙が流れ落ちた。


「ごめんなぁ。ずっと後悔して生きてきたよ」

「うん、お母さんからも聞いたよ」

「……愛してるから」

「……えへへ、それも聞いた」


 そこまで言ってから、ラナーシャはハッと表情を改めた。

 そうだ、ここにはアルシェとグレイもいるのだった。そう思い出すと、マントのお腹部分を持ち上げて涙を拭った。……いくら久しぶりの親子の時間だとは言え、こんな甘い声を聞かれでもしたら恥ずかしさに悶絶してしまう自信がある。


「……二人とも、ありがとう。また会えてよかった」

「ああ、本当はこっちから会いにいくべきだったんだけどさ」

「ううん。旅は危険なんだから、無理はしないで」


 そう言うと、少し照れ臭いのか、シグレは泣き顔を極力見せないようにしながらラナーシャの頭を乱暴に撫でた。

 ラナーシャがくすぐったさから嬉しそうに顔を顰めていると、乱れる前髪の向こうから一人の少女が駆け寄って来るのに気付いた。――先ほど、村の入り口でラナーシャたちを迎えた、あの少女だ。


「お父さんお母さん! 冒険者が村に来たんだよ! それも――」


 嬉しそうに声を上げながら駆け寄って来た少女は、ラナーシャの姿に気付くと、その場に立ち止まり首を傾げた。


「――三人も……って、あれ? さっきの冒険者様……?」


 そんな少女を振り返ったシグレは、ラナーシャの頭をポンポンと優しく叩きながら言った。


「シルヴィア。この子がラナーシャだよ」


 そうやって自らを紹介した父親によって、ラナーシャはその少女の正体を知った。


「ラナーシャ……お姉ちゃん? あなたが私のお姉ちゃん?」


 その少女――シルヴィア・セルシスはどうやら歳の離れた妹のようだった。

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