02:アラサーOLと男子高校生の、“雨の日”
季節は春と夏の
どこか遠くで、お
外の天気は、雨だった。
「まぁ、梅雨だしねぇ。そりゃ雨だって降るじゃん? じゃんじゃん降るじゃん?」
ソファの上に寝転がっている
部屋の外からは、ザーザーと強い雨足の音がしている。
「……」
ソファに横になっている
「……? どしたの?
寝転がった姿勢のまま、
「もしかして、怒ってるかい?」
「……いえ、怒ってませんけど」
「えー? 怒ってないって言うのなら、その不機嫌そうな態度は何なのさ?
「……意地悪しないで下さいよ、
膝をがしっと抱えて、頑固に体育座りを決め込みながら、
「心外だなー、
「――私の服、着てるのが」
「……そりゃそうでしょ。恥ずかしいに決まってるじゃないですか」
依然としてそっぽを向いたまま、
「――っ……ぶふっ……! あはは! 何その顔……っ! やっべー、
「いやです」
「まぁまぁ、そう言わずにさ。
「い、や、で、す!」
ムキになった
「えー? けちんぼだなぁ、
「からかわないで下さいよ、
「だって、面白すぎでしょ、これ。あ、
「ちょっ……!」
フーっとタバコの煙をふかし、指の
「
頭に載せていたバスタオルを
「
「その……ジャージとかなかったんですか?」
「ん? あるよ。ダボダボのやつが」
けろっとした顔で、当たり前のように
「何でそれ出してくれなかったんですか! いや、今からそれ借ります! ジャージ貸して下さい、
情けなさで一杯になった
「ふっ……いいぜ、
ソファの上で寝転がっている
「……謀りましたね……
プルプルと震えながら、
「むふふー。よい眺めじゃ、よい眺めじゃ」
組んだ素足をプラプラと揺らしながら、
***
「いやー、ごめんごめん、ちょっとしたイタズラ心だったんだよ。許しておくれよ、
ジャージに着替え終えた
「もぉ……ほんとやめてくださいよ、
テーブルの上に無造作に置かれた、コンビニのロゴマークの入ったビニール袋を指差して、
「いや、それは困る。ほんとに困る。それは私の休日の生命線なんだ。
ソファの上に正座で座り直した
「……まぁ、別に、いいですけど……」
頬を指先で
***
コチッ、コチッ。と、壁掛け時計の小気味よい秒針の音が聞こえる。
窓の向こうからは、梅雨時の雨のサーっという心地よい静かな雨音がする。
アパートの2階のガラスには、幾筋もの雨粒の
「……」
「……」
会話は、なかった。
ふだんはコンタクトレンズをつけている
口の端には相変わらずタバコが
文庫小説からは一切目を離さずに、けれども絶対にタバコの灰は落とさない
その1番上の段、文庫小説ばかりが並んでいる段は、そこだけ異常に神経質に整理されていた。作家の名前ごとに文庫が50音順に並べられ、更に同じ作家の作品が50音順に
そんなことを考えながら、
――通学の時間帯に、時々アパートのベランダで
――突然いたずらを思いついて、女性ものの服を着させようとしたりする
――休日に男子高校生を自分の部屋に上げて、何も
――僕には、よく、分からない。
「……こっち座ればぁ?」
床に座って深海魚図鑑を読んでいる
「……そうします」
「ん」
ソファの右側3分の1の領域に
コチッ、コチッ。と時計の秒針が時を刻む。
サーッ。と、雨音がさっきよりも小さくなる。
ペラッ。と、
トントン。と、
……。
……。
……。
トスン。と、
「……
「背中、痛くなっちった」
口の端にタバコを
「そうですか」
「うん」
――
でも、まぁ、それでいいんだろうな、と、
それだけは、
***
「あー、タバコ、切れちゃったなぁ」
「
ゴソゴソとビニール袋を
「げっ! マジ?! 何でさー」
「だって僕、未成年ですよ? 買えませんよ、タバコ」
「うーむ……そりゃそうだな……」
「そんなら、買いに行こっかなー、タバコ」
猫のように伸びをしながら、外を眺めて
「……あ、良かった、乾いてる」
どこか遠くから、お
「よし、出かけようぜ、
いつの間にか、雨雲はどこかへ流れていっていて、窓の向こうの空は、青く晴れ渡っていた。
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