第4話 冒険者登録と初依頼
買い取りカウンターと反対側にダンさんに案内される俺達は「あそこだ」と指を差された方向に視線をやると俺は飛び出す。
そのカウンターに一直線に走る。
徹、まっしぐらですやん!!
丁度、順番待ちがなかったので俺は飛び付くようにカウンターに身をのり上げる。
そんな俺の行動に目を白黒させた金髪ポニーテールのエルフ女性は驚いた顔をしているが美しさに損ないはなかった。
だが、俺が注目してたのはそんな外見ではない。そうもっと内面を抉るようなモノである。
「ゆーれる、お胸様が~み~ぎ、ひだ~り~」
とても高貴で崇高なモノであった。
元の世界でもテレビ以外ではお目にかかれない素晴らしいオッパイとバスト。俺のパイウターが数値がどんどん上がり続ける。
「どこまで上がるんだ、F……G……ま、まさか!! Hまで行くのかっ!」
「えっとボク? 何を言ってるのかな?」
眉間に皺が寄り、コメカミに血管が浮いているが計測に忙しい俺は気付く事はなかった。
後ろから頭を鷲掴みにされて頭から鳴ってはいけない音がするが俺は計測を止めない。
「徹、いい加減にするの!」
「無理だ、俺はこの後、この胸を揉む為に……ゲハッ!」
俺の頭を持ち上げてカウンターに顔を叩きつけられる。
「違うの! 私達は冒険者登録にきたの!」
俺とルナのやり取りを見ながらダンさんは顎を撫でながらニヤニヤと笑う。
「なるほどな、あんちゃんも隅に置けないな?」
「あれ、ダングレストさんじゃないですか? ペイさんに怒れるのが怖くてこちらに?」
そう言われたダンさんは苦虫を噛み締めた顔をする。
「女のそういう話の広がる速度は恐ろしいな……そっちは解決した。こっちにきたのはこいつらの冒険者登録費用を出してやろうと思ってな。訳有りで文なしらしくてな」
再び、ペイさんに説明したように事情説明をすると納得したようで頷かれる。
「なるほど、それを理由に遅れたと言ってペイさんに許して貰ったのですね?」
「まあ、違うと言えないんだが、何故分かる?」
エルフの女性は、クスクスと笑いながら「男の人の嘘は装飾が多いですから」と言われる。
そして、ダンさんに続けて言葉を告げる前に俺を指差す。
「馬鹿っ、俺は真摯にお胸様と戯れてるだけだ!」
「胸だけ凝視するのは失礼なの!」
俺とルナのやり取りを眺めるダンさんとエルフの女性であったが、ダンさんが負けを認めるように手を上げる。
「次、嘘吐く時はシンプルにするようにするよ?」
「まあ、それで騙されるのはペイさん以外だけでしょうけどね?」
本当に敵わないとばかりに溜息を零すダンさんが喧嘩のようなじゃれ合いをする俺達の頭を叩いていく。
それで我に返る俺達。
「一応、ペイにも言ったように最低ラインまでは面倒みてやろうと思ってるから、さっさと登録を済ませようや?」
「すいません」
「ごめんなさいなの」
エルフの女性に向き合うと受付業務を始めてくれる。
「今日はどのような御用件でしょうか?」
「はい、貴方の素晴らしいオパァ……」
「冒険者登録にきたの、ふんっ!」
後頭部をルナの拳で打ち抜けれてカウンターに顔を叩きつけられた後、そのまま押さえつけられる。
エルフの女性は何事もなかったかのように対応する。
「では、こちらの用紙にお名前を記入してください」
「分かったの」
俺の頭を押さえたまま、出された紙に名前を書いていくのを横目で見ていると俺のモノまで記入してる。
良く見ると俺の名前が『トール』とされてて、ルナなりと意趣返しであろうか? ルナはちゃんと徹と発音できてるから勘違いしてないのは分かる。
ダンさんもそれを見て苦笑いを零していた。
その様子だとこれぐらいの偽名には煩くない組織のようである。
まあ、俺としても外国人に名前を教えたらそんな感じに呼ばれるのを何度か体験してたので、まあいいかと流す。
ルナは書いた紙をエルフの女性に渡す。
「はい、有難うございます。ルナさんとトールさんですね? では次はジョブの確認をさせて頂きます」
「えっ? 冒険者じゃないの?」
ルナから解放された俺がそう聞くとエルフの女性は首を横に振る。
「いえ、そちらの意味ではなく、そうですね、その人の特徴みたいなものをジョブという形で調べるのですよ」
そんなのあるんだぁと思いつつ、ダンさんを見つめてみる。
俺の視線に気付いたダンさんは、懐からカードを取り出す。
「俺は剣士だ。近接職が特徴なら武器に対応したのが出るから、武器を選ぶ時に悩まずに済むから意外と便利だぞ?」
なるほど、と思ってるとエルフの女性はルナの前に水晶を置く。
「では、早速、調べますので水晶に手を置いてください」
「分かったの」
ルナが水晶に触れると覗きこむエルフの女性は眉を寄せる。
「あれ? 一瞬、ノイズが走ったような気がするけど、気のせいね。ルナさんのジョブは『モンク』です。先程の彼を打ち抜いた拳を見た後なので疑いようがありませんね」
「えっ? うん」
どうやらルナはモンクか……
となるとさっきの一撃もかなり手加減されてた可能性があるから、胸ネタをする時は命懸けという事を覚えておこう。
エルフの女性は、ルナの前から今度は俺の前に水晶を置く。
「では、トールさん触れてください」
「触れていいんですか?」
ええ、どうぞ、とエルフの女性が言うので遠慮せずに触れることにした。胸に。
フニョン、という擬音が聞えるような柔らかさが俺の手に伝わる、そして俺の顔に二つの拳の感触が伝わる。ルナとエルフの女性の夢のコラボレーション、ダブルパンチが俺を打ち抜く。凄く痛い、反省はするが後悔はない。俺の右手がとても幸せだった。
ルナは俺の右手首を捕まえると水晶の上にあてる。幸せな感触をどさくさに紛れて2度目を狙うつもりだったが無理のようだ。
水晶から俺の情報が映し出されたようで、エルフの女性が水晶を覗きこむ。そして、何故か2度見すると俺の顔をみて微妙な声を届かせる。
「トールさん、あなたの職業は開拓者です」
「え? それって未開の地で村を作ったりする人のこと?」
「いえ、開拓者というのは読めないジョブが1つあって、そのジョブの特性を見て開拓者と呼ばれているだけです。厳密に言うと開拓者というジョブは存在しておりません」
え、俺ってレアジョブなの? でも微妙そうな声で伝えてきてるし、良くないジョブなのだろうか。
エルフの女性に説明を求める。
「開拓者って何なんですか?」
「開拓者というのは今まで存在してなかったジョブを発現させるかもしれない可能性を秘めたジョブです。過去に2度、ユニークジョブといったジョブを発現させたという記録があります」
なんか宝くじが当たれば左うちわで、外れるのが基本って感じの残念ジョブのようだ。ちょっと落ち込んできた。
「その読めない文字ってどんなのか教えて貰っていいですか?」
「いいですよ。こんな感じの文字のようなものが書かれてます」
そういわれて、受付嬢が書いた文字を見つめる。「ニー……」、ウォ! 続きを読む精神力は存在しない。確かに可能性だけは存在してるジョブと言える。
俺ってそんなにダメな存在なのかな……
ちょっと落ち込んでいたら、書類手続きが完了したようだ。
「では、ギルドについての説明に入りますね」
要約するとこうだ。
冒険者同士ケンカしちゃダメだぞ? 仲直りの手伝いはギルドはできないので、自分で頑張って! ギルドに登録してる状態で犯罪に手を染めると指名手配でザックリだよ? てのがギルドの規則らしい。
そして、ランク制を取り入れているらしく、下がFから始まってアルファベットの逆順番で上がって、Aの次がSらしい。基本的に自分のランクの仕事しか選べないが、ギルド側と交渉次第で1個上のものが受けれる。
だが、これは形骸化していて、1個上のものは余程の特殊なものじゃない限り、受けられるらしい。
と、そこまで説明し終わったら、「登録料、銅貨5枚です」と言われる。
俺達の財布、もとい、ダンさんを俺とルナが見上げる。
「おう、約束だからな」
そういうと躊躇を見せない、きっぷの良さで茶色いコイン10枚をカウンターの上に置く。
どうやら、あれが銅貨のようである。
「はい、お預かりしました。カードを作ってきますので少々お待ち下さいね?」
「俺もちょっと席を外す。すぐに戻ってくるから待っててくれ」
ダンさんはそう言うと貼り紙が沢山ある方向へと歩いていく。
俺とルナが顔を見合わせて首を傾げているとエルフの女性が帰ってくる。
「こちらが冒険者カードになります。ご確認してください」
俺とルナの眼の前に銅色したカードを置かれる。
カードには、
トール 開拓者 F
とだけ書かれている。
どうやら必要最低限のようだ。
ルナ モンク F
まあルナのもチラッと見たが同じよう書かれている。
「以上で、説明と登録が終了しましたが、他にお聞きになりたい事がありましたら、今でもいいですし、後日でも質問してください」
「では、早速、その大きなオッパイ揉んでも……」
今日、何度目かの後ろから打ち抜くダメージが襲いかかる。
フンッと鼻を鳴らしたルナが明後日の方向に顔を背け、俺が後頭部の痛みに耐えてると苦笑いしたダンさんが戻ってくる。
「あんちゃんも懲りないねぇ。早速だが、お勧めの依頼を持って来てやったぞ?」
そう言うと俺とルナの前に依頼書と書かれたモノが置かれる。
俺の前には、
[薬草採取、1束、銅貨3枚。10束まで]
という依頼が置かれ、ルナには、
[倉庫整理、清掃。4時間拘束。1人、銅貨30枚]
が置かれて、お互いその内容に目を通す。
「何をともあれ、金がないと生活ができない。どっちも素人でもできる仕事だ。頑張ってみろ」
そう言われた俺達は頷いて見せるが俺はダンさんに質問する。
「薬草ってどんなの?」
「知らないのか? これがそうだ」
ダンさんが腰につけてるポシェットから取り出した葉っぱは三又の槍のような尖った葉っぱであった。
こんなに特徴的だったら間違わないな。
「じゃ、昼も過ぎて腹も減ってるかもしれんが、働かざる者食うべからずだ、気合い入れてけ」
そう言われた俺達は拳と突き上げて「おおうっ!」と気合いを入れた。
これからの生きる糧を得る為に俺達は動き始めた。
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