第1話 ここはどこ? 私は徹

 気付くと俺は石畳の上で寝ていた。


 ゆっくりと起き上がると頭に鈍痛が走り、顔を顰める。


 痛みがある場所に手を持って行くとコブができており、これが原因かと納得する。


 頭を押さえながら、辺りを見渡すと石畳に石の壁で造られた広い空間、俺のゲーム知識が訴える。



 ここ、ダンジョンじゃねぇ?



 それを眺めて、乾いた笑いを浮かべる俺は、夢と断じて頬を抓って痛みで起きようと思うがすぐに止める。

 何故なら、現在進行形で頭がズキズキと痛いので夢である事を早々に否定されたからであった。


 この異常事態に慌てたい気持ちもあるが、誰もいない以上、叫んだりしてたら後で思い出した時に死ねると思うと、現状打破する為に冷静になれた。


 ここでジッとしてても意味がないので周りを確認する事から始める。


 それほど広い場所ではないので、すぐに調べ終わった。


 結果、分かったのは、上に行く階段と下に行く階段があると分かっただけである。


 宝箱もないし、なんて不親切な、と憤る俺は、とりあえず、どちらから行くか黙考を始める。



 俺のゲーマーとしてのカンが言っていた。ここは下に降りるのが正解だと!



 意気揚々と階段を降りていくと扉があるのに気付き、迷いもなく扉を開く。


 開いた扉を音速で閉じてカンヌキをかけると階段を駆け上る。


 息が切れながら下を見つめるが何の変化もなくてホッと胸を撫で下ろす。


 開いた扉の先には蛇がいた。


 ニシキヘビ? ナメクジじゃないの?


 と聞きたくなるような太さ、俺が2人分で足りるかどうかの胴周りをしたモノがとぐろを巻いていた。

 俺の目算があってるなら全長10m程に見えたから長さだけはニシキヘビと変わらないかもしれないがあの太さだと迫力が段違いであった。


 扉を見つめて、俺に襲いかかろうと思って扉に体を叩きつけるような音がしてこない事に安堵の溜息を零す。


 俺のゲーマーとしてのカンもたいした事ないな、と思うと良く考えるとゲームはほとんどしたことがなかった事を思い出す。


 うん、一本取られた。


 セオリー通り、上に行くベきと踏ん切りをつける。


 階段を昇りながら考える。


 これって俗に言う異世界転移なのではないだろうかと。


 起きた直後は、まだ悪戯の可能性を考えたがさっき見た蛇が地球上に存在してるとは思えない。


 これがドッキリだとしたら明らかに刑法にひっかかるレベルでアウトな予感しかしないのである。


 ドッキリだったら、笑われて終わるだけ、異世界転移なら何が起こるか分からない以上、さっきのような不用意な事を避けようと俺は自分に戒める。

 さっきの蛇が襲いかかってこなかったのは幸運だったのは間違いないはずなのだから。 


 階段を昇り切ると扉がまたあったのでソッと開けながら隙間から中を覗く。


 淡い青い光に照らされているのは疑問が残るが化け物はいない事を確認した後、一旦、扉を閉じる。


 モンスターはいないがあの青い光が安全か分からない。


 かと言って、戻っても下に降りる巨大蛇の住まう下の階しかない。


 救助など異世界転移であれば期待するだけ無駄だし、あの青い光が有害であれば、ここに来る人すら存在する訳がない。

 このまま、ここにいてもジリ貧間違いなしである。


 それにあの青い光は安全だと俺のカンがそういってた。


 意味があるかどうか分からないが、再び、ソッと開けると静かに侵入する。


 パッと見た感じ、行き止まりの小さな小部屋といった場所でトラップなどがない限り、化け物なども含めて危険はなさそうである。


 一応、奥に行くと背後から青い光が照らされてる事に気付き、振り返ると人が収まるぐらいに大きなクリスタルがあった。

 いや、良く見たら本当に中に人がいる事に気付いた俺は近づいて見上げる。


 中には長い青い髪をクリスタルの中で漂わせるようにして祈るように指を汲んでいる美しいというより可愛らしい少女が眠るようにそこにいた。


 デニム生地ぽい生地で作られた袖なしの服と短パンの白の統一で手には指抜きグローブ、ニーソックスと短パンで生まれた絶対領域から生み出される魅惑ゾーンが俺の心を揺さぶるが視線を上に上げていくととても残念な気持ちに襲われる。



 オッパイがないのです! そう、俺はオッパイ至上主義者!!



 そこに至るまでは高水準だっただけに俺は残念であった。


 なんとなく気が抜けた俺はクリスタルに手を触れてしまう。


 触れた瞬間、周りが真っ暗な空間になり、急上昇するエレベーターに乗ってる気分に襲われる。

 実際にGに襲われて目を瞑って踏ん張っていると瞼から漏れる光に気付き目を開けると湖の上に居る事に気付く。


 そして自然落下で落ちるが、それほど高い位置から落ちた訳ではなかったので、少し水を飲んだだけに留まる。


 岸までもそれほど離れてなく安堵の溜息を吐きながら泳ごうとすると、先程の少女も傍に居り、ゆっくりと沈んでいく。


 慌てた俺が引き揚げるとどうやら意識がまだないようであった。

 仕方がないので少女の背後から脇下に腕を通して背後から抱き締めるようにしながら背面泳ぎ、ラッコのような泳ぎ方をして岸を目指す。


 岸に近づき、足が着くようになると歩きながら引っ張っていくと状況が変わった事に気付く。


 閉じられていた少女の瞳、髪の色と同じ青い瞳が開いており、俺を驚いたような顔をして見つめていた。


 つぶらな瞳をどんどん大きくしたと思ったら、


「いやぁぁぁ!! どこを触ってるのっ!!」


 そう叫ぶと俺の言い訳を聞く前に俺の腕から逃げ出すと右ストレートを俺の頬にクリーンヒットさせた。


 まあ、とどのつまり、その一撃で俺は意識を失った。

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