第10萌 マリオネットライティング(前編)

私の名前は草刈智代、双月アキラって言う刺客の技に惑わされて

モエッティ辰巳支部に連れて来られちゃった。

その人の意中の人間になりきれる技「ツインズフェイク」

神と神が私をめぐって争う姿は正直、萌えたわ。

そして、壮絶な肩ズンと顎クイの対決

さすが私の神、ちゃんと双月アキラを浄化してくれた、かっこいい。

さて、辰巳支部の支部長って一体どんな奴なのかしら?


***


「あーあ、やってくれちゃったよねー

アキラってば僕に任せればアレ位楽勝で手に入りますよとか言ってたよね」


部屋の奥から妙に甲高い声が聞こえてくる。


「だ、誰だ!?」


「もしかして支部長カ・モ」


2人の緊張感が少し高まるのを感じる。

そして、姿を現したのは一見眼鏡をかけた文学少女と

言った感じの女性。服装も寒色系で地味。

手には本らしき物を持ってるみたい。

ただ、容姿と声のテンションにちょっと違和感。


「人の陣地に勝手に入ってきて誰?はないよね

名乗るなら先にしてよね、神ヶ尾くん?」


「どうせ、俺たちの事は知ってるんだろ!」


「まぁ、そりゃ虎屋町支部も潰されちゃったわけだし

知らないわけないわよねー」


「よねー、がうざいかも!

とりあえず僕が鴨乃端渉です!」


いやいや、あんたも相当うざいから!

確かに語尾の『よね』はちょっと耳障りね・・・


「うるさいよね、太っちょさんには興味ないよね

しかも、あんただって『かも』がうざいよね」


「太っちょさん・・・?言ったね!」


「かもる?」


「本当のことを言ったまでよね、あんたはどうせ何の責任もなくていいわよね」


「僕はそんなに太ってなんかいないさ!」


「太っちょさんはもう黙れよね」


「2度も言ったな、母さんにも言われた事ないのに!!」


全くどうでもいいやり取りが行われてる。

何かのパロディなのかしら?


「お前が支部長なのか!?」


「そうよね、私がこの辰巳支部の支部長

人形依子ひとかたよねよねー」


眼鏡越しの顔が相当どやっているのが分かる。

よねって言う名前だから語尾によねを付けてるのだろうか?

って、そう言えば人形依子ひとかたよねってどこかで聞いたような。


「あんた達、私のおケイをいじめちゃってくれたらしいよねー」


「おケイ?何の話だ!」


もしかしてこの人おケイの上司とかなの?

そうか、私が彼女を浄化したの神たち知らないんだった。


「まぁ、別にあんな奴の事どうでもいいのよね

でも、私の立場的にあなたたちを許すわけにはいかないのよね

速攻でモエッティの仲間入りをしてもらう、よね」


「ここまでモエッティと戦ってきた俺がそんな簡単にモエッティに入るとでも

思ってるのか!」


「そうだ、僕だってモエッティなんて大嫌いだ!」


「私だって、もう惑わされないわよ!」

さすが、神はおケイの事総スルーなのね。

そして、嘘つけ!二次元大好き豚野郎!


「ふーん、そんな事言ってられないよね

すぐに楽にしてあ・げ・る・よ・ね」


何かいやな雰囲気がする。


「行くよ!必殺!『マリオネットライティング!!』」


そう叫ぶと彼女は手に持っていた本に一心不乱に何かを書き始めた

「一体何を書いているの?」


「何かあやしい、あいつに書くのをやめさせなきゃ!」


「よし、ここはかもちゃんが!!

さっきはよくも太っちょさんとか言ってくれたなぁ!」


豚野郎が彼女に向かって走り出す

完全にフラグを立てたわね、これは。


「かもる!むやみに近づくんじゃない!」


「太っちょさん、ひっかかった、よね」


「はぁぁぁぁぁん!!!!」


走り出した途端気持ち悪い声を上げて豚野郎が立ち止まった。

いつも様子はおかしいけど、いつも以上ね。


「どうしたんだ、かもる!?」


「彼女はかもるくんに手を触れてはいないわ」

すると豚野郎がこちらに向かって歩いてくる

明らかにいつもと表情がおかしい、これはあいつの技のせい?


「ともよ」


「ど、どうしたのかもるくん」


「僕、お前の事今まで嫌い嫌いって言ってたけど

本当はかわいくてかわいくて仕方ないんだ。

言うだろ?かわいさ余って憎さ100倍って」


「か、神?かもる君がおかしい」

キモイ、キモ過ぎる。いつも以上に気持ち悪い!


「おのれ!かもるに何をした!それを止めるんだ!」


神も彼女に向かって行ってしまう。

多分彼女に近付いたらダメなんだわ。

「ダメ!神!」


「ぬぅわぁぁぁぁ!!!」


「そちらもかかったよね!」


「か、神!?」

今度は神が変な声を上げて立ち止まる。

神の表情もうつろな物に変わっている。

鬱な表情の神もかわいいけど、でも今はそんな事を考えてる

場合じゃなさそうね。


「おい、かもる!俺のともよんを何勝手に口説いてるんだよ!」


何これ、どうなってるの?神が豚野郎に食って掛かってる。

もしかしてこれって2人が私を求めて争ってる状況じゃない?

豚野郎は心外だけど、これは完全に女子があこがれるパターンのシチュじゃない!

ただ、何か2人とも片言なのはなぜ?


「僕は自分の気持ちに気付いてしまったんだ

ともよんは僕にとってかけがえのない人だってことが」


「お前、本気で言ってるのか?

いくらお前でもそれ以上は許さない」


「やるのか?僕のサイリウムが火を吹くぜ!」


「そんなへなちょこサイリウムごときで俺に勝てるかな?」


「お願い!私のために争うのは止めてぇぇぇぇ!!!!」

やだ、これ言ってみたかった台詞

中学2年生でこんな事言うシチュに出会うなんて思ってもみなかったわ。


「じゃぁ、ここはともよんに決めてもらおうじゃないか!」


「ともよんはすでに俺の女なんだ、お前なんかを選ぶわけがないだろ!

ただただ屈辱を味わうだけだぞ?」


「ふっ!この僕の魅力を持っていれば神を超える事なんて、なんて事ないさ。

僕は神を超えた神になる!」


「さぁ、ともよん、どっち?」


声を揃えて2人が私に迫ってくる。もちろん選ぶまでの事じゃないんだけど

とにかく2人ともあいつに何かされてるのは確か、どうしよう。


「さぁ、さぁ、さぁ」


「後はあなただけ、これで全員モエッティ入り、よね?」


「よく分からないけど、ピンチはピンチね」


神と豚野郎がなぜか選択を迫ってくる。

辰巳支部長『人形依子ひとかたよね』の必殺技『マリオネットライティング』

にはどんな秘密が隠されているのか。次回も読んでね。

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