第9萌 ツインズフェイク(後編)
俺たちの前に突如として現れたモエッティ第4の刺客『双月アキラ』
必殺技『ツインズフェイク』によりともよんが俺に化けた奴にだまされて
さらわれてしまった。
モエッティ辰巳支部・・・一体どんな罠が仕掛けられてるって言うんだ
ともよん、待ってろよ!すぐに救い出す!
***
「ツインズフェイク・・・なんて恐ろしい技なんだ
その人の意中の人間になりきる事が出来るなんて。
あぁ、あいつが女の子だったらどれだけ良かったか・・・
ヒカルたん・・・」
かもるが恍惚の表情を浮かべている、また妄想にふけっているようだ。
「かもる、いいから早く辰巳支部へ急ごう!」
「そう言えば、神は辰巳支部の場所知ってるのか?」
かもるが的確な指摘をしてくる。
確かに俺たちは辰巳支部がどこにあるのかを知らない。
「てっきりかもるが知ってるものと」
「神、すまないが僕は知らないよ」
沈黙が流れる、朝の街の喧騒がやけにうるさく感じる。
「お困りのようですね」
その沈黙を破るように誰かが声を掛けて来た。
振り向くと、そこにはモエッティ元信者のスバルが立っていた。
「スバルさん!」
「もしかして、僕にヒカルたんのマウスパッドを届けに来たのカモ」
「私は辰巳支部の場所まで案内しましょう」
「どうして僕たちがここにいることを?」
「い、いや、別に着けていたとかそう言うのはないんですよ」
と言いながら何か照れくさそうな顔をしている。
なんだろう、何かいやな感じがする。
でも、今は辰巳支部に急がなければともよんの身が危ない。
「分かりました、とにかく辰巳支部へ案内してもらえますか?」
「もちろんです」
「行くぞ!かもる!」
「仕方ないから行ってやるカモ」
やる気のなさそうなかもるを尻目にスバルさんの案内で
辰巳支部へ向かう。どうも電車に乗って二駅ほど先らしい。
そして、それらしい建物が見えてきた。
虎屋町支部は結構奥まった所にあったが、辰巳支部は
結構街中に堂々と建っている。相変わらずピンク色の建物。
虎屋町支部は壁面に美少女キャラがたくさん描かれていたが
ここは美男子のキャラクターが多い。
支部によって微妙に色が違うと言う事なんだろうか。
「お気付きだとは思いますが、ここが辰巳支部です」
「これは、腐女子向けの支部なのカモ」
「私は外で待っています、気をつけて」
スバルさんはやはり支部への立ち入りはしない。
裏切りものと言う事があるのだろう。
「さぁ、今日も僕のサイリウムダンスが火を吹くよ~!」
なぜかテンションが上がっているかもると一緒に支部内へ入る。
自動ドアを潜り抜け、受付らしい所がある。
「すみません、ここに双月アキラさんはいますか?」
自分でも丁寧すぎるとは思うんだけど、ここはしっかり受付を済ませないと。
「神、僕たちはさらわれたともよんを救出に来たんだぞ。のんき過ぎるカモ」
「双月アキラさんなら先ほど本堂に入っていかれました、廊下奥までお進み下さい」
受付のお姉さんがとても親切に教えてくれる。
なんだ、モエッティはとても律儀でとても素敵な教団じゃないかと感じてしまった。
いや、そうじゃない今はともよんを探さなければ。
「さぁ、かもる行こう!」
「ラジャー」
数々のアニメやゲームのポスターが貼ってある廊下を進み、その先の本堂へ。
「どこだ!?双月アキラ!!ともよんを返してもらうぞ!」
「ふは、ふははは・・・来たか神ヶ尾俊平!待っていたぞ!
のこのことここまで来たか」
影から双月アキラが現れる。背格好は俺と同じ位だ。
その表情には余裕が満ち溢れている。
「当たり前だ!ともよんはどうした!?」
「まぁ、そんなに焦るなよ」
「もう、あんな事やこんな事になっているのカ・モ」
「か、神・・・?」
「ともよん!?無事なのか?」
奥の方から姿は見えないが間違いなくともよんの声が聞こえた。
「僕がそんな乱暴な事するわけないだろう?女子にはあくまで
紳士にスマートに!!」
「じゃ、さっさとともよんを開放しろ!」
「僕は変態紳士」
かもるの意味不明な発言はスルーして状況を確認する。
「な、なんで?また神が2人・・・どうなってるの?」
「目を覚ますんだともよん!そいつは俺じゃない!」
「無駄だよ、『ツインズフェイク』の効果はまだ切れていない。
ともよん、僕が本物の神だよ」
「嘘だ!そいつは俺じゃない!」
ダメだ、まだともよんはあいつの事も俺に見えてるようだ。
ともよんの気持ちを
「さて、本題に入ろう、実は彼女をさらったのには
「な、何?」
双月アキラの表情が真剣なものに一瞬にして変わる。
「欲しいんだ!」
「あぁ、これはBLネタが来たカモ!」
「何が欲しいって言うんだ?」
「君が持ってる、ソレに決まっているだろう!」
「ソレ?」
「ある人からのお願いでね、どうしてもソレが必要なんだ。
アソコの扉を開くのにね。ソレとともよんを引き換えでお願いしたい。
もちろん、『ツインズフェイク』も解除する事を約束しよう」
「ソレとかアソコとか隠語が多過ぎて想像が膨らんで仕方ないカモ」
「そうか、お前たちはコレを欲しがっているのか・・・
だが、コレはじいちゃんから受け継いだ大切なものだ
簡単に渡すわけにはいかない!」
そう、このセクシーアイドル大全集だけは渡すわけにはいかない!
「なんだ、アレの事か・・・興味ないカモ」
「ふーん、どうしても渡せないって言うんだね。
ではともよんは僕が頂くよ、それでもいいのかな?」
「くっ!」
「さぁ、早くソレをこちらへ!」
「神、ソレを絶対に渡してはダメ!私ならどうなっていいから!」
「あの三次元女、心にも思ってない事を言ってるカモ」
じ、じいちゃん、俺一体どうしたら・・・
するとまたセクシーアイドル大全集が光り、声が聞こえてくる。
(神ヶ尾の子よ、迷うことはないぞ。奴を浄化すれば良いだけじゃ)
そうだ、俺はどちらも渡さない。あいつを双月アキラを倒す!
「かもる、頼む!あいつの気を引いてくれ!」
「え?もしかして、ついに神に頼られたのかも!
まっかさーれよー!行くぞ!かもちゃん、最大の必殺技
超絶!迅速!闊達!ミラクルサイリウムダーンス Ver.1.02!!」
「な、何だこのキモイオタ芸は!?」
ものすごく気持ち悪い動きに気をとられ双月アキラに隙が出来る。
その間に奥にいるともよんの所へ走る。
「し、しまった!」
もうこうなったら、ともよんに強烈なインパクトを与えて目を覚まさせるしかない。
「ともよん、目を覚まさせてあげる!」
「え?か、神??」
「ごめん、こんなシチュエーションで」
ともよんのおでこに軽くキスをする。どこかで見たことがある。
強烈な印象はまやかしを解くと。
「・・・か、神が私のおでこにキッス・・・もう、ダメ・・・」
ともよんが陶酔したような表情をしている。戻ってくれ!元に!
「うーん、何か今までおかしな気分だった。
神が2人に見えてて、でも今は違う。あいつは神じゃない!」
ともよんが正気を取り戻してくれたようだ。
おでこへのキス、恥ずかしかったけどやった意味があった。
これで後はあいつを倒すのみ。
「チッ!やってくれる! この僕が穏便に済ませようとしていたものを・・・
こうなったら力ずくでもソレをもらうぞ!」
「このセクシーアイドル大全集はじいちゃんから譲り受けた大切なもの
そんなに簡単に渡してたまるか!」
「僕は今まで
男のお前だって必ず落としてみせる!
行くぞ!必殺『二段階顎クイッ!』」
「神、気をつけて!」
「俺がお前ごときに落とされるわけがない!
セクシーアイドル大全集よ!俺に新たな力を!」
(わかった、勇気を持って戦いに臨んだお前に力を与えよう)
身体の奥底から力が湧いてくる、新しい必殺技が湧き出してくる。
「行くぞ!必殺『固唾を飲む肩ズーン!!』」
「まさかのダジャレ、カモ」
「うおー!!クイッ!クイッ!クイッ!!」
「ぬおー!!ズン!ズン!ズーン!!」
奴の顎クイを交わし、肩ズンを
奴の顎クイを交わし、肩ズンを!!
「す、凄いわ!顎クイと肩ズンの争い!何とも言えない高揚感!」
「地味な戦いカモ」
壮絶な顎クイと肩ズンの打ち合い。
自分でも無我夢中で何がどうなっているのか分からなかった。
気付くとそこには双月アキラが倒れていた。
「くっ、さすがだよ神君、君の肩ズンは想像以上に最高だった・・・」
「いや、アキラ君、君の顎クイもなかなかだったよ」
自然と相手をねぎらう言葉が出てきていた。
「所詮、俺の技は二次元にしか効かないと言う事か・・・
神君、その素晴らしい技に免じて1つ教えておこう。
ソレ欲しがっているのは君の父さんだ」
「な、なんだって?父さんがセクシーアイドル大全集を?」
衝撃的な一言だった。
「そして、ここにいる辰巳支部長は本当に強い、気を付けて・・・
り、あ、じゅ~~」
そう言うと双月アキラから萌えのオーラが消えた。
「双月アキラ、本当に強敵だった・・・」
「神!やったね!」
「僕も大活躍したカモ」
辛くも双月アキラを浄化した俺たちは
父さんがセクシーアイドル大全集を欲しがっていると言う情報を得た
しかし、モエッティ辰巳支部での戦いはまだ終わらない。
支部長とはどんなやつなのか?次回も読んでくれよな!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます