第10話「五右衛門風呂を作ってみた件」
五右衛門風呂を作るのに欠かせないのは、ドラム缶の土台になるかまどだ。
その他にも湯を沸かす燃料と、大量の水が必要になる。
とりあえずドラム缶も含めて『アナザーリスト』で揃えた材料はこんな感じである。
・ドラム缶:10000P
・耐火ブロック(大)×2:800P
・すのこ(小):400P
合計で11200P消費した。先ほどのリンゴは100ポイント×3である。
残りの使用可能ポイントが、かなり心細くなったけど、この間も再生数は増えてることだし、気にしても仕方がない。
「ユーキ、どうやってお風呂造るの?」
「まずは、このドラム缶の蓋をくり抜くんだ」
ミスリル製の短剣をぶっ刺してみる。
さすがミスリル製で魔力付与されてることはある。
力は込めないといけないけど、缶抜きみたいに軽々とくり抜けた。
「ここに水を溜めるんだ」
「うん、そうなんだね」
耐火ブロックの上にドラム缶を乗せる作業はリンゴの精霊も手伝ってくれた。
すのこもミスリルナイフで削って行く。
削ったすのこをドラム缶の中に敷いた。
後は燃料になる薪と水だけだ。
ペットボトルで水を買うのも思いついてたけど、水路や川があるので、汲みに行くことにする。
このルドラの街の西側は海にも面しており、水には恵まれてる国なのだ。
「でも、水を汲んでくるのは大変」
「水はスライムに運んでもらうよ」
川まで来た。
スライムが勢いよく水を吸い込んでいく。
風船のようにサイズが倍になった。
「もう十分だ。戻ろうか」
「うん」
庭に戻ってきた。スライムがドラム缶の中に水を戻していく。
魚も混じっていたので、それは別に調理して食べることにしよう。
燃料になる薪はリンゴの精霊が、どこからか運んで来てくれていた。
「皆、ほんと頼りになるよ」
かまどに火をくべる。湯気があがり始め風呂ぽくなってきたぞ。
「うん、ちょうどいい湯加減だ。シェリル入っていいよ」
「ううん、シェリルは後でいい。先にユーキが入りなよ」
「僕は魚を捌いてるから、シェリルが先でいいよ」
日は沈み夜になり、空には星がきらめていた。
僕は光の精霊の明りを頼りに、ミスリル製の短剣で魚を調理していく。
それをリンゴの精霊が用意してくれた串に刺して焚火で焼く。
味付けはシンプルに塩だけにした。
「ユーキ、とっても気持ち良かった。ありがとう」
そこには風呂上がりの艶やかな笑みを浮かべるシェリルがいた。
「お魚焼いてるの?」
「うん、僕が風呂に入ってる間、焼け過ぎないように見てて」
「わかった、待ってる」
風呂に入る。
久々の風呂は最高に気持ちが良い。
星空を見ながら満喫する風呂は極上の極みだ。
風呂から上がり、焼き魚をシェリルと一緒にほふった。
獲れたての魚も絶品だった。
「はふはふ……お魚、美味しいね」
「うん。そうだね」
唐突に放り出された異世界だったけど、僕は幸せを噛みしめていた。
ポイントをガンガン稼いで、この箱庭を元の世界に負けないくらいの快適空間に変える。
それが僕の最初の目標だ。
それに……シェリルの他にも、家族がいるしね。
光の精霊、スライム、リンゴの精霊。皆僕の大切な家族さ。
◆◆◆
翌日の朝、目覚めると前回同様、シェリルが僕に抱きついて寝ていた。
目覚めと同時に、アイポンで動画の再生数を見るのが日課となりつつある。
=異世界ヨーチューバー=
チャンネル名:ゆうなまTV
アカウントLv:2
チャンネル登録者数:18128
投稿動画数:4
獲得ポイント:83784P
使用可能ポイント:71322P
=投稿動画リスト=
・とある道具で火をつけてみた:再生回数203575回
・ステーキソースで食べる:再生回数147090回
・スライムをペットにしてみた:再生回数200102回
・ライターの試作品が完成しました:再生回数276935回
一瞬目を疑った。
全ての動画の再生回数の桁が増えている。
更にチャンネル登録者数が18000を超えた。
昨日1万ポイント以上奮発したのに、その7倍のポイントをゲットしていた。
これはマジで凄いことになっている。
グリーバスさんが僕のチャンネルの人気を引きあげてくれたと言っても過言ではない。
その証拠にフリートークは、その話題で持ちきりになっているのだが。
馴染みのメンバーの書き込みもあった。
--
356.マリシア@魔女っ子ちゃんねる
チャンネルの人気、絶好調ですね!
私も人に懐くスライムに興味があります!
381.ミレーユ@冒険者ギルドマスター
凄い人気のようねユーキくん。
ソースの試作品がそろそろ完成するかもよ。
そうそう前に言ってたデスソース、入手できたらお姉さんに報告してね。
392.ガラハウ@3番街の守護神
スライムってあの時、抱いてたスライムだよな?
随分でかくなったもんだな。
良かったら今度、拙者も乗せてくれ!
それにライターの試作品みたぜ。
その件で、大事な話がある。
時間ある時にでも顔をだしてくれ。
400.アリエッタ@騎士見習い
キリ番踏んだぞ。
グリーバスと知り合いだったとは驚いた。
あの店は愛用している。
君の紹介で値引きできるのなら頼んでみてほしい。
401.ルーク@騎士見習い
どうも、ルークです。
今度、御一緒にスライム狩りでもいかがですか?
432.グリーバス@工房
スリングショットと短剣の使い心地はどうだ?
次回は金を払って貰うぞ、わっはは。
--
皆、コメントありがとな。
その内、もっと人気がでたら質問コーナーとかやちゃうのかな?
現に魔女っ子チャンネルのマリシアさんは質問を回答する動画まであげてるし。
まあ、それよりも気になるのは、ガラハウさんの大事な話ってなんだろう?
うーん、気になるなあ……。
シェリルが目覚めたら会いに行ってみるとするか。
「あれ? ユーキもう起きてたの?」
「おはようシェリル」
「ユーキはいつも起きるのが早い。寝ぼ助でごめん」
「そんなことより、シェリル。ちょっと僕のチャンネルの再生数見てみなよ」
「わあ……! す、凄いねユーキ」
「だろ? やっぱレジェンド級のヨーチューバーとのコラボは凄まじいよ」
「で、先日のライターの件で、ガラハウさんが僕に用事があるみたいなんだ」
「うん。いってみよっか」
「その前に朝食しよう」
「うん!」
朝食はシェリルが庭で育ててる新鮮な野菜とパンで済ませる。
僕達はスライムに跨りレッツゴーだ。
初対面の時は強面のガラハウさんに戸惑ったものだったけど、実際は王国のために頑張ってて、国民を愛する守衛さんだった。
今日も街を囲む外壁の入口で守備隊長として見張っているはずだ。
ガラハウさんを見かけたので声をかける。
「ガラハウさーん!」
「おう! ユーキ殿にシェリルに……ん? それがあの時のスライムだな」
「はい、ちょっとした訳ありで、急成長してでかくなったんです。でも、人に危害は加えませんので、心配しないでください」
「いや、そのスライムは子ども達に凄い人気のようだぞ。人に懐くスライムを見つけ出そうと、スライムの狩り場は人で溢れておる。っと、そうだユーキ殿に大切な話がある」
「僕もガラハウさんの書き込みを見て会いに来たんですよ」
「そうであったか、たぶんそうではないかと思っておった。実はだなユーキ殿」
「はい」
「ラムレス侯爵が君に会いたがっておる。よければ会って貰えぬか?」
「ええ、もちろんいいですよ」
「ユーキ殿ならそう言ってくれると思っておった。拙者もお供するゆえ、今から参ろうか」
「はい、わかりました。シェリルも一緒で構わないですよね?」
「もちろんだとも!」
僕達はガラハウさんに案内されて、ラムレス侯爵のお邸へと向かった。
最強の職業はYooTuberだった件 暁える @Akatsuki-L
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