第5話 五日目

やあやあ、ごめんごめん、待たせてしまったかな?

ちょっと用事があって、遅れてしまった。

待っていてくれてありがとう。

さて、今日はどこのコーヒーショップに行こうか。

え?さすがにコーヒーの香りは飽きたって?

まあ、そう言わずに今日もコーヒーを求めて行こうじゃないか。

そうだね、今日はとっておきのコーヒーショップに行こう。

小さなお店なんだけれどね、本格的なコーヒーを出してくれるいい店なんだ。

きっと、君もあの店を気にいると思うよ。

さあ、ぐずぐずしていないで、行こうじゃないか。

今日は遅れてしまった分、時間は限られているからね。


うん。やっぱり、ここのコーヒーの香りは格別だね。

君も気に入ってくれたかい?

せっかくだし、今日はカフェラテを頼むといいよ。

カフェラテも格別に美味しいのさ。

お客も少ないようだし、今日はカウンター席で美味しいコーヒーが出来上がる様子でも見ながら話をしようじゃないか。

まあ、とにかく座ってゆっくりとドリップする様子でも見ようじゃないか。

ああ、マスター、おすすめのコーヒを二つ用意しておくれ。

ん?自分のコーヒー代くらい自分で出せるって?

今日は私は遅刻してしまったからね、せめてコーヒーくらい奢らせてくれよ。


さて、コーヒーも出てきたところだし、私の趣味の話をしようか。

まず、私は中学の頃からコスプレを始めた。これが一番最初の趣味だ。

昔はコスプレなんか流行っていなかったし、市販の衣装なんて売ってない。

だから、自分で作るしかなかった。今じゃ、考えられないだろうけど、昔のコスプレイヤーのほとんどは自作だ。初心者の私は中学の家庭科の先生に教えを乞い、衣装をつくり始めた。

これがとんでもなく困難を極めた。なにせ、私が作った事があるのはエプロンくらいなもので、特殊な衣装をなど作った事がなかったのだから。

まあ、とにかく私は教師に教えを乞い、始めて布を買って学校から借りたミシンを使って作り始めた。

たしか、着物の羽織のようなものを作ったのを覚えている。

手先はそれなりに器用だったので、なんとか、羽織は完成した。

しかし、問題が起こった。

私が作った羽織と、アニメキャラの羽織が全くの色違いだったのだ。

順番に説明していこう。このキャラクターは最初、白の羽織を着ているという設定で雑誌に載っていたのだ。私はそのため、白の布で羽織を作った。ところが、アニメに登場した、そのキャラは紫色の羽織を着ていたのである。

とにかく、焦った私はソメダインと言う布を染色するもので、なんとか真っ白な羽織を紫に変えた。

そして、私は妹や友達と初のコスプレデビューを飾る。

そこは定期的にコスプレイベントをしている会場で、溢れんばかりのコスプレイヤーがひしめきあっていた。

更衣室に案内された私はびっくりした。なにせ、更衣室とは名ばかりの部屋の一室だったのだ。もちろん、ついたてなんてない。他人に見られまくって着替えをするのが当たり前だった。私はもじもじとしながら着替えを済ませた。

そんでもって、他の人の完成度の高さに圧倒された。まあ、初心者なんだから当然なんだけど。

まあ、とにかく着替えを終わった私たちは、会場へと足を運んだ。

そこは、まさにカオス。なにせ、色々なキャラたちがダンスしたり写真とったりしていたのだから。

うわーすごいなー、なんて思っていると、唐突に声をかけられた。

「ねえ、あなたのコスって○○のコス?」

その人は私と同じキャラだが、色違いの白の羽織を着ていた。

急に自分の衣装が恥ずかしくなって、私は思わず逃げ出した。

ところが、その人は何を思ったのか、追いかけてきたのである。

そして、他にも同じキャラの衣装をきていた人たちも何を思ったのか、この追いかけっけこに加わったのだ。

こうして私はあえなく捕まり、みんなで写真を撮った。

今ではいい思い出だ。多分、こんな面白い追いかけっこがなかったら、コスなんて趣味を続けていなかったと思う。

そうして、私はコスプレの面白さにハマった。今でも色々な衣装を作り、持っている。まあ、あの時の羽織はどこかにいってしまったのだけれど・・・。

当時の私は特に男装のコスプレが好きだった。なにせ、自分とは全く別の人物になれるような気がした。作っている最中も、出来上がったらどんなに素敵な衣装になるのだろうとワクワクしながら作ったものだ。

こうして、めきめきと裁縫の技術を上げて、私は自作レイヤーとなった。

衣装だけでは飽き足らず、武器まで作るようになった。しかも、絶対に自分にしかできないような武器を作った。ある時は、マスケット銃、ある時は自分の身長を超えるような大きな弓、大きな金色の杖、あらゆるものを作った。実際、着ている時も作っている時もとても楽しかった。なにせ、他人が真似できないようなものを作るのが楽しかったのだ。

写真もたくさん撮ってもらって、ちょっと有頂天になる日もあった。

まあ、私はコスプレが好きで、楽しいってことは理解してもらえたかな?

あまり長く話すと、次の趣味まで長くかかってしまうから、次の趣味の話をしよう。

事の発端は私が無職になって、暇をしている時だった。有料チャンネルの購入をしませんかという訪問販売的な人が家にきた。暇だった私はその人のいう有料チャンネルをとりあえず、購入してみた。

これが事の他面白く、特に一日中アニメしかやってないチャンネルがあった。

毎日、ポテチとコーヒーを飲んで、アニメを見ていた私だったが、一つのアニメにハマった。それはTCG(トレーディングカードゲーム)のアニメで、弱い主人公が負けたり勝ったりしながら強くなっていくというものだった。私はこのアニメが好きで好きでたまらなくなった。特に女の子なのにものすごく強い子がいて、彼女の使うデッキ(山札)が好きで、このカードがあれば、自分も強くなれるんじゃないかって思い始めた。

そして、とうとう主人公たちのやっているTCGのカードが欲しくなってしまった。

こうして私は彼氏と初めてのカードショップを訪れる。

初めてのカードショップは、思いのほか綺麗で、ショーケースにカードが並んでいた。不思議な光景だった。始めて見るからかもしれないが、まさしくそこは異界の地のような気がしたのを覚えている。

私は恐る恐る店員にこのカードないですか?とかそんな感じの事を聞いたと思う。

その店員さんこそ、後の私の師匠にあたるカードショップの店長だった。彼女は優しく、

「このカードありますよ?使うんですか?」

「いや、使い方よくわからなくて・・・、多分、観賞用になっちゃうかも」

「よかったら、ルール教えましょうか?」

「いいんですか?」

「もちろんですよ。でも、そのためにはデッキが必要です。持ってますか?」

「いえ・・・」

「じゃあ、こちらの構築済みのデッキにこのカードを入れたらいいと思いますよ」

かなりのやり手な販売上手な人だ。

「あ、じゃあ、それも買います」

「でも、このTCGは対戦相手がいないといけないんですよ。彼氏さんも初めたらいかがですか?楽しいですよ」

「じゃあ、俺は赤いデッキがいいですね」

「では、こちらの赤いデッキの構築済みが強いですよ。二つ買って組み合わせると大抵のデッキには勝てますよ?いかがですか?」

「じゃあ、それも二つください」

本当、やり手だと思わない?まんまと二人共にデッキを買わせるなんて凄すぎ。

こうして私たちは二人でカードとにらめっこしながら、初の自分専用デッキを完成させた。そうして、店員さんは丁寧にルールを教えてくれたのだ。

だが、家に帰ってやっていると問題が発生した。

それは《同時時限誘発効果》という初心者にはかなり難しい問題がゲームプレイ中に起きてしまったのだ。簡単に説明すると、同タイミングになにかしらのカードの効果が起きてしまって、更にその効果によって相手プレイヤーにも効果が発生してしまったのだ。これの解決方法は簡単なものだったのだが、当時の私には全くわからなかった。なにせ、

「これの効果であなたのカードを退却させます。その効果でここのカードのパワーが上がります」

「ちょっとまった、このカードの退却効果を発動したいです」

「は!?」

「え、だって、このカードにはドロップ(捨て札)に置いたらって効果もってるもん!」

これで、かなり大喧嘩した。それはもう散々。

まあ、そんな事もあったし、丁度無職だったのも重なって、私は毎日のようにカードショップにいってお姉さんにルールの指南をしてもらった。それはもう、本当に毎日行って、師匠に習った。習うより慣れろというとおり、彼女は店にいる大半の時間を私の為に割いてカードの対戦相手になってくれた。一度、心配になって、こう聞いたことがあった。

「○○さん、私のげーむの対戦相手になってくれてるじゃん?店長に怒られたりしてない?」

「え?私が店長だから怒られないよ(笑)」

って言われて、あぜんとした。そりゃそうだ。

とにかく、私は彼女がいなかったらカードなんてやってなかったと思うし、今もやってないと思う。ついでにいうなら、他のカードイベントで雑誌に載るようなことにはならなかったと思う。

雑誌に載ったのはいい意味で乗ったので、勘違いしないでくれよ。

まあ、こうしてどうにかこうにか、二人共がルールを覚えてきた頃、私はまた狂ったようにカードを買って強いデッキを作り始めた。こうなってくると、彼氏は全然私に勝てなくなって、三回負けるとキレてカードを投げてくるようになった。なので、三回に一回はわざと負けていた。

ここまで強くなると今度は大会に出たくなった。私は大会に出て見ることにした。

初の大会でカード民の民度の低さを知ることになる。

初戦の相手はやさしい人だったのだが二回戦目が最悪だった。手札事故(序盤に手札に欲しいカードがない)を起こしている様子でカードを場に並べてこない。こちらは順調な手札であったので、そのまま、三回アタック。その途端、そいつは突然、台パン(いわゆるテーブルを叩くマナー違反な行為)をしてきた。震える私はターンを相手にかえした。相手はドロー(手札を引く行為)をするがまたも事故ったらしく、今度は過度なシャカパチ(手でカードをシャッフルしながらパチパチする行為)をしてきた。ちっと舌打ちしてとりあえずアタック一回。私はこれ幸いと、盤面(ゲームボード)にカードを並べてフルアタック。その瞬間、苛烈な台パンがテーブルを襲う。とうとう、ジャッジ(審判)によって過度の台パン、ハンドシャッフルを禁じられる。そして、私によって止めの一撃をくらってあえなく撃沈。これが私のTCGでの一番最初の大会だった。

その後は強いデッキを作り、嘘みたいな勝率を上げまくった。ボックス争奪戦と呼ばれる、景品が1ボックスという大会でも優勝して、どんどん勝ちに勝ちまくった。

もう、この頃になってくると相手が狂ったように罵ってきても無視できるスルースキルが身に付いた。

私が得意としたのは黒のデッキだった。今でも黒のデッキを使っているくらいだ。

とにかく、この黒のデッキは汎用性が高く、どのデッキとぶつかっても勝てる確率が高かった。

しかし、私の大好きだったそのTCGは何を思ったのか突然、面白みをなくした。なぜかと言うと、突然高いパワーのカードばかりをだしてくるようになったのだ。私は面白くなくなった、そのTCGに飽きた。そして、新しいTCGにハマったこれがなんとも面白い。古いカード新しいカード、関係なく使えて、すごく楽しい。負けても勝っても楽しい。

まあ、TCGにも興味をもってもらえただろうか?うん?あまり面白くなかった?

それは、残念。

最後は最近流行りのTCGシャドウボックスの話で締めくくろう。

これはTCGのカードを切りぬいて、カードの中のキャラが実物みたいに見えるようにするっていう工作。なかなかに面白いからまあ、ネットで調べてみてみればいいと思うよ。中々凝っていて見るのも楽しいし、作るのも楽しいよ。


さて、コーヒーも飲み終わったところだし、今日はこのあたりで、話を終わりにしようか。ああ、話つかれて、少し顎が痛くなってきた・・・。

ああいや、別に話をするのが嫌なわけじゃないから、そこは気にしないで。

私が好きで、君に一方的に話してしまっているだけだから。

さて、明日はなんの話を君にしようか。

そうだな、明日は私が同人ゲームを作る過程やら苦労やら、楽しかったことやらの話をしよう。声優科の300人オーディションやアニ○イトにゲームが並んだ話をしようじゃないか。まだ私が若かった頃は全国チェーン店が同人ゲームを置くなんてことは中々になかったんだよ。

それじゃあ、また明日、この時間にあの場所で・・・。


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