204号室 あやつり人形
「ほら、もう朝よ!いつまで寝てるの、起きなさーい」
お母さんがいつも通り起こしに来る、私はお母さんに言われるがまま目を擦りながら重たい身体を起こして1階のリビングへと足を運ぶ。
「朝ごはんもう出来てるからチャッチャと食べなさい、のんびりしてると学校遅刻しちゃうわよ」
「分かってるよ……」
口やかましく言ってくるお母さんに嫌気を感じながら朝食を済まし、制服に着替えて学校へと向かう。
* * * * *
「この問題を解いてもらおうかな……じゃあ佐伯、この問題解いてみろ」
32人もいるクラスで何で私が指されなきゃいけないのか、納得いかないけど拒否する理由も見つからないから黒板の前に立ちチョークの音を響かせて答えを書く。
「うーん、間違ってるな……他にわかるやついるか?」
自分の席に座る前に私は先生の言葉を背中で受け止めた。
最初から挙手制で答えが分かる人に書かせればよかっただけじゃないのとウンザリする。
「ふふ、あんな簡単な問題も分からないなんてダッサ……」
後ろでボソッと呟く声が聞こえた。
でもいつもの事だから私は気にしないことにしている。
* * * * *
昼休みになると私はいつも校庭にあるベンチに座り本を読む、この時が一番落ち着ける、1人でいるととても気持ちが楽になる。
私はいつもチャイムが鳴る15分前に教室に戻るのだけど何だか教室が騒がしい。
「ねぇ!カバンに入れてた私の財布が無いんだけど!?どういうこと!!?」
誰かに盗まれたのか、はたまた落としたのか分からないけど、とにかく財布が無くなったと声を荒げている、でも私には関係ない。
「ちょっと!アンタ知らない??私の財布が無いの」
女は何故か私に声をかけてきた、普段声をかけてこないくせにこんな時だけ寄ってくる。
「知らない……私外にいたから……」
小声で事実を伝える、その後すぐに嘘が大きく私の言葉を包み込んだ。
「私見たわよ、あかりちゃんの席で何かゴソゴソしてるとこ」
「はぁ!?やっぱりアンタが持ってんじゃないの?早く出しなさいよ!!」
注目は一気に私に集まった。
隣にいた女の嘘によって私は逃げ場をなくした。
「カバンと引き出しの中見せなさいよ、あとポケットの中もね」
私はゆっくりとした動作でカバン、引き出し、ポケットの中と順に見せていく、当然財布がある訳もない。
「ほら、持ってないから……もういいでしょ……」
「ふーん、さてはアンタ金だけ抜き取って財布捨てたんでしょ?」
また訳の分からない言葉を浴びせられる、この場から消えたい。
私はそう考えていた。
「アンタの財布に入ってる金、全部出してよ、そしたら許してあげるから」
「え、私学校に財布持ってきてないよ……だから無理だよ」
弱々しく反抗をしてみるものの容赦なく罵声を浴びせ続ける女。
「はぁ?何アンタうっざ、今すぐ死ねよ、早く死ね!!」
女がそう言うとあちこちからケラケラと笑い声が聞こえる。
「……分かった」
「ほんとに死ぬ気なの!!?アンタバカじゃない???」
私のまさかの返事に女は驚きを隠せないようだけど、どこかワクワクしている、そういう姿が私の目には映った。
「まぁ死ぬ勇気なんてないから嘘でしょうけどね、でも死んだらそれはそれで面白いかも♪」
女は冷たく刺さりそうな視線を私に向ける。
教室を出た私の頭の中には死ねという言葉が駆け巡っている。
私は人に言われた事をどんな時でも受け止めて生きてきた。
人から言われてきた事だけで私の人生は出来ているのかも。
なんて面白くない人生何だろう。
そう思いながら私の見ている世界は逆さまになった。
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