108号室 夢管理創造局

白い部屋のあちこちにパイプが設置されていて、パイプの先からはキラキラとまばゆく光る封筒が箱に落ちていっている。


箱に手を伸ばして封筒をとって中身を確認する、中には数十枚のカードが入っていてそれを相談しながら引き出しにしまっていったり、廃棄したりする。

引き出しに入れられたカードは一つにまとめられて睡眠時に「夢」として現れる。


壁には無数のモニターが埋め込まれていて、そこで人が完璧な睡眠をできているかを確認している。


そんな作業をしているモノがこの部屋にはたくさんいる。


ここは人の出来事を管理し、夢を創る場所だ─


* * * * *



「これは10歳の男の子、今日は休日でテレビで好きな特撮ヒーローの番組をりんごを食べながら見ていたそうですね。しかし、ジュースをこぼしたり夕飯できらいな人参を残して母親から怒られていますね。」



「そいつは気の毒だな。とりあえず特撮ヒーローとリンゴとジュースは残しておこう、ジュースの海から出てきたリンゴの怪物をヒーローになった自分が倒す夢でいいだろう。」



手際よく夢の内容を決めて引き出しに入れていく、きらいな人参と母親に怒られた出来事は悪夢を生み出さないためにも廃棄をしている。



もし悪夢を生み出してしまうとせっかく創った夢が壊され人の睡眠を妨げしまう可能性があるからだ。



そういうことにも気をつけながら夢を創っていくが、時に危機にさらされる場合がある─



突如部屋中にサイレンとアナウンスが鳴り響きモニターには「Warning」と文字がデカデカと表示され、赤いランプが激しく点滅しだした。



「局長!また奴らが…!」

「いいか、慌てずに戦闘準備だ!何としても人の夢を壊さぬよう守るぞ!」



局の床にバチバチと電撃を走らせながら黒いホールが出現するとそこからはピエロやボロボロのぬいぐるみ、壊れたロボットのオモチャが数百単位で出てくる。



悪夢の根源となりうる出来事を廃棄した際に、たまに廃棄不良が起き、具現化してしまった悪夢が創った夢を壊しにかかることがあるのだ。



人の出来事全てを常に管理しているココでは別に珍しいことではない、そのため奴らの対処には慣れている。


「人の夢を守るため、全員かかれー!!」


局長の掛け声と共に戦闘が開始される。

各々が銃や剣を手に応戦する、所詮は廃棄不良の悪夢だ、力はさほど無いために一方的に攻撃をすることは可能だ。



1時間足らずで悪夢を処理して一件落着で皆が一息ついて作業に戻ろうとしたその時、またもやサイレンが鳴った。



全員が焦りの表情をみせる。

連続しての悪夢の侵入は初だった。



さっきと同じく黒いホールから出てきたのはピエロやぬいぐるみなどではない、とてつもなくデカイ鬼だった。


「局長…これって……」

「おそらく人のトラウマになった出来事だ…力が圧倒的すぎる…!しかし、私はやらねばならん…!」


皆が怯える中、果敢にも局長は鬼に攻撃をしかける。

しかし鬼が腕を勢いよく振りかざし、蚊を叩き仕留めるかのごとく局長はいとも容易く潰されてしまった。


「局長が…!皆!局長の仇をとるぞ!!」

決死の覚悟で鬼に立ち向かうがほとんどが呆気なくやられてしまった…



鬼が部屋を荒らしていきパイプからは光を失った黒ずんだ封筒が流れ落ちてきている。

引き出しの中に入っていたカードも全て破られ夢が壊されてしまう光景が意識が朦朧としている最中見えた。



徐々に目の前が霞んでいき、やかましく鳴り響いているはずのサイレンは遠くから聞こえてきているかのようにだんだん小さくなっていく。



「人の夢を…守れなかった…」



これが最後に発した言葉だった。





* * * * *






ガバッと体を起こして目覚めた。


「ハァ…ハァハァ…ゆ、夢…?」


そこら中から汗が吹き出し部屋着はビッショリしていて嫌な感じだ。



「最悪な夢だった…鬼とか怖すぎんだろ…勘弁してくれよ…」



そう思いつつ顔を洗い洋服を着替え朝食を食べる。


この時点で夢のことなどまったく気にしておらず普通に会社へ向かう。






* * * * *




「局長、すみません…こちらの不手際で悪い出来事を引き出しの中にしまっていたようです…」



「お前のせいだったのか、だからあんなにうなされていた訳か…まったく、いつも言ってるだろ?夢を創る時には気をつけろよって─」

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