103号室 えがおのアメ玉

休日はいつも仕事の疲れを癒すために散歩をしている。

散歩コースはいくつかあり、今日は公園を歩きに行く。


10分ほど歩くと公園につく、結構大きなところで犬と遊んでいる人、ジョギングをする人、木陰にシートをひきのんびりする人、時間の過ごし方は様々だ。


公園のジョギングコースをぐるっと一周しようと歩いていたら人溜まりができている場所があった。


気になってそこに行ってみると皆何かを食べているどうやら売店のようだ。

看板には「えがおのアメ玉」と書いてある。


「えがおのアメ玉…?アメだけで商売できているのか?」

アメを食べている人たちは「とても美味しい」と絶賛している。


「えがおのアメ玉〜5粒で40円だよ。そこのお兄ちゃんもどうだい?買ってみないかい?食べたら必ず笑顔になるよ。」

年寄りの店主が言ってきた。こういうことを言われるとどうしても買わなきゃいけないという感じになってしまうので好きではない。


40円という破格の値段だ、しかも必ず笑顔になるって悪いクスリか何かではないかと思える。

しかし買ってみないかと言われたので仕方なく買ってみることにした。


「毎度あり〜、噛まずにちゃんと舐めて味わいなよ」

アメは噛まない派なので心配無用だ。


その場で試しに1粒食べてみる…


美味しい…柑橘系の味が口に広がりいい匂いがスッと鼻から抜ける。

あまりの美味しさからかだんだん笑顔になっていき、とても幸せな気分で満たされた。


「明日彼女にも食べさせてあげよう、きっと喜ぶぞ」

散歩中の思わぬ出来事だったが公園にきて良かったと思いながら家に帰った。


* * * * *


翌日彼女を家に招きアメを差し出した。

「これえがおのアメ玉ってやつで昨日公園で買ってきたんだけど、とても美味しくてホントに笑顔になるんだよ、食べてみなよ」


「そうなの?じゃあ食べてみよっ」そう言って1粒口に入れる。


「ほんとだ!めちゃくちゃ美味しいじゃん!」

アメを口の中でコロコロしながら言ってきた。

とても気に入ってくれたようだ。


「あげてよかった」と俺は満足げに言って、テレビを見ていたら横でガリガリと音がした。


「えっ…ちょっとなにこれ!急にまずくなったんだけど…」

思わず粉々になったアメを吐き出す。




「もうこのアメいらない…」と落ち込んだ様子だった。



俺はふと言われたことを思い出す…

「噛まずにちゃんと舐めて味わいなよ。」




もしかしてそういう事だったのか…




その日以降彼女の笑顔を見る事はなくなった。

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